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医学科4年制から5年制への昇格と学生生活

 大正14年,4年制でスタートした日大医科は,昭和6年に(第3回生卒業の年),5年制医科に昇格した。基礎医学の充実と将来の「医学部昇格」を見据えた医学科の意図でもあった。  この昭和6年は,それまでの4年制医科学生(7回生,3月26日入試)と5年制医科学生(8回生,4月7日入試)が同時に入学している。従来の4年制医科の1年生は「舊1年生」,5年制医科の1年生は「新1年生」として区別された。すなわち,7回生,8回生は同じ昭和6年入学である。舊1年生は昭和10年3月に第7回生として卒業し,新1年生(5年制)は翌昭和11年に8回生として卒業している。学友会雑誌「級報」によれば「舊」は「4月13日に始業式」,「新」は「5月4日に入学式」とある。残された学籍簿によれば正確な7回生入学は昭和6年4月1日,8回生の入学は1か月遅れの5月1日とある。昭和6年5月29日に開催された新入生歓迎会(本所公会堂)では,学友会雑誌第8号に「360有余名の新入生をお迎えすることは−無上の歓び−」とあり,また神田「大常盤」で開催された(舊制)1学年のクラス会報告によれば「会する者168名」とあることから,新制度の下で確かに360余名の学生が同時に入学していたことがわかる。  学友会雑誌第8号の巻頭には学友会会長額田豊による「新5年制に就いて」と題する文章が掲載されている。「開業に間に合えば足るるとするに止まらずして,大学出身者に対して特色ある臨床医家をば確信をもって育成してみたい」と意気込みを述べる一方で,1学年360有余名の学生を抱えて臨床医学の教育に幾分かの戸惑いも示している。いずれにしても,この新・舊2クラスの学生たちは舊4年制の学生が第7回生として卒業するまでの4年間を大集団で学園生活を共にするのである(7回生と8回生は最初の4年間は同級生であった)。  授業は,教室はどうしていたのであろうか。講師・教授陣は授業にどう対応していたのであろうか。4年制の学生が留年や休学した場合,1学年下の5年制クラスに移行した(できた)のであろうか。不思議なことに,この2クラス併存の実態について記した文書は見当たらず,また当時の先生方もその実態を語ることはなかった。

内科臨床講義
内科臨床講義,10回生アルバム,昭和13年