特色を生かした医学部の研究

宇宙医学

月火星探査も視野に宇宙飛行による人体影響を研究

KENICHI IWASAKI
岩﨑 賢一

日本大学医学部
社会医学系衛生学分野 教授

 衛生学分野は,宇宙飛行による人の脳血流への影響を研究しています。NASA の宇宙センター(写真1) 等に行って宇宙飛行士を対象にした実験などもしています。
 現在, NASA 主導で日本も協力し月探査を行うアルテミス計画が進められており, 更に将来の火星探査の検討も行われています。最近は,民間企業による民間人の商業宇宙飛行も盛んになってきました。このように宇宙船で人が宇宙に行く時に体に何が起こるのか科学的に知るためには医学研究が必要です。
 人は二本足で立ったことにより手が自由になり知能が発達したと言われますが, 二本足で立っている際は重力の影響で足の方に血液が停滞しやすくなります。人の循環系は長い年月をかけ,この重力の負荷に適応しました。それゆえに重力が無い宇宙にいくと変化しやすいという特徴があります。当分野は, この宇宙での循環系の変化に関し, 特に重要な臓器の脳の血流を測定する等して研究を進めています(写真2)。この脳血流の変化に関しては, 宇宙飛行士も対象にして,筑波宇宙センターから国際宇宙ステーション(写真3 ©NASA) と交信したり, ヒューストンにあるNASA のジョンソン宇宙センターに出張したりして研究しています。
 また, 宇宙飛行の影響は, 宇宙の無重力だけでなく, 宇宙船により宇宙と行き来する際にかかる過重力(地球重力1G より大きな重力) に起因するものもあります。その研究をするために,我々は遠心人工重力負荷装置(図) を持っています。この装置は, 人が座って搭乗し回転することで重力を負荷することができる装置です。これを使って長年独自の研究を展開してい ます。
 このような研究活動には医学部の学生も選択コースなどで参加することができます。これらの研究については,高校生を対象に大学の研究を広報する夢ナビにおいて紹介しています。

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