教授挨拶

岡村行泰

はじめまして、日本大学消化器外科の岡村行泰と申します。
このホームページをご覧になっているのは、これから日本大学医学部附属板橋病院、もしくは日本大学病院で診療を受ける予定である患者さん、すでに受けている患者さん、または研修を考えている研修医、医学部学生の方々が多いかと思います。詳細は、各サイトで紹介しておりますが、現在の日本大学消化器外科の特徴を述べたいと思います。

日本大学消化器外科は、これまで肝癌治療において多くの経験を有しており良好な治療成績をおさめてきましたが、低侵襲手術(腹腔鏡下、胸腔鏡下、縦隔鏡下、もしくはロボット支援下)の導入が他施設に比較し遅れていました。
2021年4月の着任以降、積極的に低侵襲手術を取り入れており、2021年8月からは肝腫瘍、2022年3月からは胃がん、2022年5月からは膵腫瘍の患者さんに腹腔鏡下手術の導入を開始し、2022年7月からは直腸癌、2023年6月からは肝腫瘍の患者さんにロボット支援下手術を開始しました。現在は、結腸・直腸がん手術においては9割ほど、肝切除においても8割ほどの患者さんに対し、創の小さな低侵襲手術を行なっています

私が専門とする肝切除においては、これまで胸まで切り上げるようなJ字切開、右側の腹直筋を横断する逆L字切開が標準的な創でしたが、低侵襲手術では、5-10mmの傷5-6カ所で実施ができます。前任地で腹腔鏡下肝切除を導入し始めた頃は、執刀医からみても患者さんの回復の早さに驚いたほどです。具体的にはゴルフを行なっている患者さんにおいて、これまで術後半年くらいまでラウンドができなかったのが、術後1ヶ月くらい(個人差あり)で可能となるといった感じです。特に初回開腹肝切除が行われた患者さんに2回目の肝切除(必ずしもすべての患者さんに可能ではなく、一定の条件を満たした患者さんが対象となります)を腹腔鏡下で行った後、「前回より凄く楽だった」と言われて以降、すっかり腹腔鏡手術の魅力に取り込まれてしまいました。

私の低侵襲手術に対するポリシーは、「開腹手術と同じことを行う」です。低侵襲手術だからといって、開腹手術と比較し、安全性、根治性が劣っていては、何が低侵襲かわかりません。これらが保証されないのであれば、開腹手術を選択すべきと考えますので、全患者さんに低侵襲手術が行えるわけではありません。一方で、肝機能が悪く開腹肝切除が困難である患者さんに対し、体壁破壊の少ない低侵襲手術であれば切除可能となるケースも経験します。従って、現在の低侵襲手術に対するポリシーは、「開腹手術と同等以上のことを行う」に変わりつつあります。
低侵襲手術は、手術を受けられる患者さんに大きなメリットを生み出すアプローチですが、従来の開腹手術と異なるトレーニングが必要です。多くの患者さんに「思ったより楽でした」と言って頂けるように、日々手技の向上、チーム力向上に努めています。

これまで低侵襲手術を中心に述べましたが、消化器疾患は、適切な診断を行い、適切な治療を行うということが極めて重要です。当然のことながら外科だけでは診療は成り立たず、内科との連携が非常に重要です。現在、消化器疾患の入院患者さんは、内科、外科に関わらず、同フロアで診療を行っていますし、患者さんに関する相談を迅速に行うことができるシステムを作り、週に1回のカンファレンスなどを待たずに治療方針が決定できています。また、画像診断を行う放射線科、病理診断を行う病理診断科との連携も重要であり、困難症例においては、適宜、科横断的な検討会を行い、診断精度を高めることができており、総合力という点で高いレベルの診療を提供できていると自負しております。患者さんには安心して治療を受けて頂きたいと思いますので、外来診察時にわからない、不安なことがありましたら、何なりとご質問下さい。

日本大学消化器外科で研修を考えている研修医、医学部学生の方々へ

先に述べた低侵襲手術(腹腔鏡下、胸腔鏡下、縦隔鏡下、もしくはロボット支援下)の導入を積極的に行っています。低侵襲手術は、手術動画が残りますので手術教育という点でもメリットがあります。低侵襲手術のトレーニングが常にできるよう教室内にはドライボックスを常設しており、定期的に動物を用いたアニマルラボも開催することで、十分な修練を行うことが可能です。
外科専門医、消化器外科専門医を取得するために必要な手術経験数、業績を教室で把握することによって最短で資格が取得できるシステムを作っています。研修に興味がある研修医、医学部学生の方々は、遠慮なく連絡をして下さい。