医学博士号と大学院制度

医師のランクアップとスペシャリストへの第一歩!

学位記

大学医学部医局の大きなメリットとして医学博士号の取得があります。

医局での研究活動を通じて取得する医学博士号は医学を職業とした者の一生の財産となり、将来の社会的にも医師のランクアップをしてくれます。

サブ・スペシャリストからスペシャリストをめざす医師にとって当教室および日本大学医学部では2つの大学院制度を利用するなど、幾つかの方法で医学博士号の取得が出来ます。

大学院プログラム
電子顕微鏡を確認する医師たち

従来型の大学院で4年間の大学院学生として過ごしますが、一般耳鼻咽喉科診療にも携わりながら研究を続けることができ、医学博士をめざします。自分の目指す方向に時間を多く使うことが可能です。

大学院・横断型医学専門教育プログラム
(大学院と専門医を並行して所属するプログラム)

後期臨床研修医(専修医)として大学附属病院で研修勤務をしながら、あるいは関連病院での実地臨床を研鑽しながら大学院に所属して研究を続け、医学博士をめざします。市中病院に勤務する臨床研修期間中でも大学院に所属することができるので、専門医の取得にも支障がありません。また専門医取得後に通常勤務・診療をしながらの大学院入学も可能です。

基礎研究に関しては総合大学である日本大学のメリットを活用して他学部・他分野との共同研究も行われています。大学院制度の詳細は→日本大学医学部ホームページでもご紹介していますのでご覧ください。

大学院便り

顕微鏡を覗く医師

大学院4年生の岸野明洋です。私は横断型医学専門教育プログラムを履修しています。このプログラムは大学院と専門医指導を4年間並行して履修することが可能なプログラムで、主科目と副科目を一つずつ、選択科目を4科目履修することになっています。大学院の研究と臨床診療を同時に並行して行うことが可能です。臨床経験を積みながら、学位取得が可能であり、多忙な時期もありますが非常に効率的で有意義であると考えられます。

私は内耳感覚細胞を用いて小胞体ストレスにおけるオートファジーと細胞死の関連性について研究を行っています。小胞体ストレス反応やオートファジーは発生や分化、老化、神経変性疾患や癌などの様々な疾患、細胞死などに深く関与すること知られています。小胞体ストレス反応やオートファジーは、内耳感覚細胞にも存在する現象であり、それらの障害が急性感音難聴や老人性難聴などと関与すると考えられます。しかしながら、内耳感覚細胞における小胞体ストレス反応、オートファジー、細胞死の関連性は未だに明らかでないことが多くあります。これらの研究は、感音難聴などの病態メカニズムの解明および発症の予防、バイオマーカーや治療薬の開発につながると考えられます。最先端の研究分野であり、内耳基礎研究を行っている研究機関は国内において多くありません。基礎研究の経験は必ず日々の臨床診療にも活きてくるものと考えられます。是非一緒に研究しましょう。

大学院便り

大学院生の浅居です。私は臨床横断型の大学院を選択しています。横断型の大学院は、耳鼻科の医局員として臨床経験も積みながら大学院のカリキュラムをこなして研究を進めるというコースです。私が今取り組んでいる研究テーマは、反回神経の再生です。日本大学医学部 機能形態学細胞再生・移植医学分野の教室にお世話になっており、脱分化脂肪細胞(DFAT)と呼ばれる細胞をもちいた再生医療を研究しています。DFATとはヒトを含む哺乳類の脂肪細胞から単離した成熟脂肪細胞を天井培養という方法で体外培養することで得られる、高い増殖能と多分可能を持つ細胞です。つまり、一旦終末分化した細胞を人工的に未分化な幹細胞へと脱分化させたものです。反回神経に関しては、頚胸部の外科手術や悪性腫瘍などで障害されることがありますが、もし障害されると喉頭麻痺が起こり嗄声や嚥下障害などを引き起こします。現時点では、麻痺した喉頭の動きを回復させることはできません。そこでDFATを用いた反回神経の再生について研究 しています。まだまだ課題は多いですが、非常にやりがいのある研究だと感じております。

大学院便り

大学院3年生の原田英誉と申します。私は横断型教育プログラムを選択しており、臨床での日常業務を行いつつ、週2日半日ずつの研究日を頂き大学院研究に取り組んでおります。横断型プログラムの最大のメリットとしては、専門医取得に必要な臨床のキャリアを積みつつ学位を取得でき、日常業務では得られないような新たな経験を積むことができることと考えております。

現在私は日本大学医学部細胞再生・移植医学分野で松本太郎教授のもと耳管開放症の細胞再生治療を目的とした動物研究を行っております。「下顎神経切断による耳管開放症モデルラットの確立」というテーマで再現性の高いモデル動物の作製を試みております。最終的には耳管開放症の細胞再生治療についての研究を行い、臨床応用にも繋げていければと考えております。

大学院研究の目的は博士号取得というキャリアアップはもちろんですが、その研究を臨床に還元し、患者さんや医局へ新たな見地で貢献する第一歩となる事であります。横断型プログラムでの日常業務との両立は決して楽な道ではありませんが、大きな目標を持ってみたいという先生は是非大学院の門を叩いてみて下さい。御一緒に切磋琢磨して行きましょう。