English




主な研究分野



他にも各メンバーの多様な専門分野を活かした研究や、異分野を融合した開拓的研究など、幅広い研究を展開しています!
ご興味のある方はお気軽に当教室メンバーにお問い合わせください。




エクソソーム/ナノチューブを介した細胞間コミュニケーションの解析

多細胞生物である私たちの細胞は、常に近隣のまた遠く離れた他の細胞と情報交換をして恒常性を保っています。よく知られている神経系や内分泌系の情報伝達システムに加え近年新しい情報伝達システムがあることがわかってきました。
 異なる細胞同士の共培養と遺伝学的手法、そして顕微鏡を用いた可視化技術を駆使することで、情報を発信している細胞と受け取る細胞を可視化することができるのではないかと考えました。実際に、細胞小器官やタンパク質を蛍光ラベルすることによって、これまでは調べることができなかった興味深い現象の詳細を明らかにすることができます。
 特に、エクソソームを使った遠隔的な細胞間情報伝達や、ナノチューブを介した近距離での細胞間伝達に注目しています。次の写真は、蛍光色素で細胞質を緑に、ミトコンドリアを赤に染めた羊膜上皮細胞が近隣の細胞にミトコンドリアを分配する現象を捉えたものです。

ミトコンドリア分配

また、以下の写真は、羊膜上皮細胞hAECsのミトコンドリアに遺伝学的ツールで赤色蛍光タンパク質を安定発現させて、隣接する別種の細胞にミトコンドリアを移す瞬間や、移ったミトコンドリアがどのような挙動を取るかを解析する実験結果の一部です。

このように、蛍光ラベルや可視化技術を使った基礎研究と、これを細胞移植に応用する研究から、細胞間情報伝達に関する様々な新規発見と医療応用を目指しています。







羊膜上皮細胞(hAECs)を用いた細胞治療の臨床応用

私たちは、ヒト胎盤から分離できる羊膜上皮細胞(hAECs)に幹細胞様の多分化能があることを発見しました(Miki et al. Stem Cells, 2005)。また、hAECsは肝臓内に移植することによって肝細胞に分化することがわかりました(Marongiu et al. Hepatology, 2011)。
 hAECsは、一つの胎盤から大量に分離できること、免疫原性が少なく、癌化の可能性も低いことなどから、肝移植に代わる細胞治療の新たなソースとして利用できると考えています。すでに私たちは、先天性代謝疾患モデル動物を使った前臨床研究を行い、比較的少量のhAECsの移植で臨床症状の改善が見られることを示しました(Rodriguez et al. Stem Cells Trans. Med, 2017)。現在は、この研究を発展させ臨床応用を目指したトランスレーショナル研究を行っています(Takano et al. Stem Cells Transl. Med., 2021)。







臨床応用







培養細胞(in vitro)から生体内(in vivo)まで、様々な細胞・臓器における細胞内Ca2+シグナルとその周辺分子の蛍光イメージング解析による未知機能の解明と、そのためのツール開発

細胞分子薬理学ユニット

.







生体内ペプチドシグナルの解析と臨床応用を目指したトランスレーショナル研究

ペプチドとは、100個以下のアミノ酸が重合したものであり、様々な生理活性を持つ細胞間情報伝達物質の一つです。私たちは、血液凝固第IX因子としてよく知られたタンパクが凝固止血以外に、細胞に対する種々の作用を持つことを明らかにしてきました。第IX因子のEGFドメインは、凝固反応の過程で活性化され、アポトーシスを誘導する作用があります。このドメインと相同性が高く、同じ機能をもつEGFドメインは、30強のタンパクに共有されています。このEGFドメインをコードするDNAを用いて担癌モデルマウスの遺伝子治療を行ったところ、腫瘍増殖は抑制され、生命予後も改善しました。一方、凝固反応時に切除されるペプチドには、内皮細胞の透過性を抑制する作用があることがわかりました。敗血症、脳梗塞、脳外傷等の動物モデルでは当該ペプチドの投与により組織の浮腫が減少し、予後が改善したり、梗塞巣が縮小したりしました。これらのペプチドは元来人体に存在するため、化学物質のような副作用は現れません。私たちはこれらのペプチドを治療剤として実用化するべく、研究を続けています。

EGFドメインによる担癌治療

免疫不全マウスに扁平上皮癌細胞株A431を移植した後、我々が研究するEGFドメインのcDNAを用いて、非ウイルスベクターによる遺伝子治療を行いました。コントロール(実線)と比べて、治療群では生命予後が改善しました(左図)。治療開始三週後の腫瘍サイズも有意に抑制されました(右図)。