献体について

献体とは

   自分の死後にみずからの身体を医学・歯学の大学における人体解剖の教育・研究に役立てるため、「無条件、無報酬」で提供することをいいます。

   生前から献体を希望する大学またはこれに関連した団体に登録しておき、お亡くなりになった時、ご遺族あるいは関係者がそのご遺志に従ってご遺体を大学に提供することによって、はじめて献体が実行されることになります。

献体によって行われる解剖とは

「解剖」は以下の3つに分けられます。   

  正常解剖・・・・・医学または歯学を学ぶ学生が人体の構造を学ぶための解剖。系統解剖もしくは一般解剖ともいう。

  病理解剖・・・・・病変や死因を明らかにするために行われる解剖。

  法医解剖・・・・・変死体の死因を調べるための解剖。

  献体によって行われる解剖は正常解剖であり、医学・歯学の基礎になります。解剖実習は大学解剖学教室で解剖学の教員の責任と指導のもとで行われます。

献体の意義

   現代は、医学・歯学の倫理が強調され本当に信頼のおける医師の育成が強く要望されている時代であります。献体によって行われる解剖実習を通して、感謝、責任などの尊い精神を学び、学識、人格ともに優れた医師、歯科医師が育まれております。


献体の歴史と現状

   昭和30年代から40年代にかけて医学・歯学の大学が増設されるに従って学生数も増し、実習に必要なご遺体が不足しました。

   こうした医学教育の危機的状況を憂えた方々が献体を思い立ち、東京大学を基点に始められた献体運動は「白菊会」という名で徐々に拡大し、その中で日本篤志献体協会、篤志解剖全国連合会などが組織され、40年あまりの間に献体篤志家団体が56団体、献体登録者の総数は二十万名近くになりました。そのうちすでに献体された方は約六万名にも達しております。最近は献体登録者数も増加の傾向にあり、医学・歯学生の解剖実習だけでなく、医療・医術の高度化のために医師・歯科医師の臨床解剖学的な研修などにご遺体を供させていただいております。

   昭和54年の秋に、日本学術会議は内閣総理大臣にあて、「献体登録に関する法制化の促進について」という勧告を行いました。法制化の実現は医学教育における献体の意義を国が公に認めることになり、重要な意味を持ちます。

   この勧告をきっかけとして、昭和57年度からは献体者に対して文部科学大臣(当時は文部大臣)からの感謝状贈呈が行われるようになりました。

   また昭和58年5月には「医学および歯学教育のための献体に関する法律」が、国会で可決成立し、今日の献体制度が確立いたしております。