医学部長のご挨拶

日本大学医学部長 片山容一
(脳神経外科学系神経外科学分野教授)
本学は、日本精神を建学の理念として、1889年に開学されました。それ以来117年の歴史を歩み、14の学部と20の大学院研究科を擁するわが国最大の総合大学に発展してきました。日本精神とは、社会のために自分の能力と努力をもって貢献し、そのことに誇りを持ちこそすれ、不相応な対価を求めないことです。わが国の人々は、それを美徳と考え、敬意をはらってきました。そんな美徳のない社会は、何かにつけ能力や努力に対価を求めます。わが国は、この美徳のおかげで大きく成長することができました。
本学医学部は、1925年3月に専門部医学科として開設され、1942年に旧制大学の医学部に昇格して、81年の歴史を刻んできました。本学医学部は、その目標に「よき臨床医の育成」を掲げています。また、それを背景として「優れた医学研究者の育成」および「熱意ある医学教育者の育成」も目標にあげています。「よき臨床医の育成」という目標は、本学の建学の理念に根ざしています。それは、自分のための学問よりも、社会のための学問を目指そうとするものです。
まもなく、本学医学部の卒業生は1万人に達しようとしています。卒業生は、地域医療および高度医療に大きな力を発揮しています。学界、官界、政界でも重要な役割を担っています。日本医師会では、もっとも多くの代議員を占めており、多くの地域医師会で医師会長などの要職を務めています。本学が連携している国公私立の基幹病院は50を超え、卒業生が病院長などとして活躍しています。また、卒業生の中から、本学の教授はもちろん、わが国の他大学や米国の大学の教授を数多く輩出してきました。
本学医学部は、入学直後から、一貫した「よき臨床医の育成」のための教育課程を構築しています。卒業後の初期臨床研修には、本学の三つの付属病院のそれぞれが、病院長の主導によって温もりのあるプログラムを作成しています。本学の付属病院は、すべての専門分野を網羅しており、地域医療に貢献するとともに、多くの分野で最先端の高度医療を提供しています。地域医療を効果的に行うために、ほかの病院や診療所との緊密なネットワークの形成を心がけています。また、最先端の高度医療を実現するために、病院内ではチームワークをもっとも大切にしています。
本学は、1956年に大学院医学研究科を設置し、すでに50年の歴史を重ねてきました。この間、5千名を超える学位受領者を出しています。2000年には、先端医学総合研究センターが竣工し、大学院重点講座を整備しました。医学の研究は、臨床的な問題意識を持つ医師が行ってこそ、ほかの誰にも真似ることのできない独自の価値を生むという信念から、臨床的な問題意識に根ざした基礎的な研究を進め、「よき臨床医の育成」と付属病院における高度医療を力強く支えています。
本学医学部の特徴を一言で表すとすれば、「よき臨床医の育成」のための幅広い総合力です。すべての専門分野で最先端の知識と技術を蓄積しているだけでなく、それぞれが緊密に連携することによって大きな力を発揮しています。さらに、本学の二つの歯学部、薬学部、生物資源科学部などの生物系学部とは、教育・研究・診療のいずれにおいても密接に協力しあっています。理工学部、生産工学部、工学部などの理工系学部とは、最先端の高度医療を開発するための医工連携が進められています。法学部、経済学部、商学部、文理学部、芸術学部、国際関係学部などの人文系学部には、人間と社会の係わり合いを広い視野で考究する共同作業を行っています。
本学医学部には、社会のための学問を目指そうとする強い意志が、建学の理念のもとに脈々と流れており、それが特色ある歴史と伝統を形成しています。
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