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トピック@
メタロプロテイナーゼ 9 (MMP9 )発現抑制PIポリアミドによる腎癌細胞の浸潤能の阻害

  腫瘍の転移においては細胞外基質の分解が必須の過程であり、細胞外基質に含まれるcollagen, laminin, fibronectin などの蛋白質を分解する活性のある酵素MMPが重要な働きをします。

  中でもtypeIV collagenを分解するMMP9の発現が各種の腫瘍の悪性度と相関することが報告されており、同蛋白質の発現を抑制することで、腫瘍の転移を抑制できることが期待できます。

  我々は腎癌組織においてもMMP9 の発現が高い患者ほど予後が悪い事を発見し、MMP9 遺伝子プロモーター領域のNF-kB 結合サイトを認識するように設計したポリアミドが(図3a)、腎癌細胞株Caki2におけるMMP9の発現を抑制し(図3b)、腎癌細胞株の浸潤を抑制することを確認しました(図3c)。

図3

Sato A, Nagase H, Obinata D, Fujiwara K, Fukuda N, Soma M, Yamaguchi K, Kawata N and Takahashi S. Inhibition of MMP-9 using a pyrrole-imidazole polyamide reduces cell invasion in renal cell carcinoma. Int J Oncol. 2013 in press

トピックA
Fc受容体γ鎖発現抑制PIポリアミドの開発
   〜免疫複合体関連腎炎の治療を目的として〜

  慢性糸球体腎炎やループス腎炎の発症には自己抗体と自己抗原の複合体の形成が関与することが判っています。

  免疫複合体が腎臓に蓄積し、同複合体を認識するFc受容体γを発現するマクロファージが集積し、それが引き金となって炎症反応が起こるというのが現在判明している発病のメカニズムです。Fc受容体γ鎖は免疫グロブリンのFc鎖を認識するFc受容体全般に共通して存在することから、免疫複合体関連腎炎の治療を目的として、我々はFc受容体γ鎖の発現を抑制するポリアミドを開発することを企画しました。

  Deletion mutant を用いたプロモーター解析により、Fc受容体γ遺伝子の転写開始点より110bp 上流から220 bp 上流の間、および80b上流から110bp 上流の2か所に、基本転写に大きく作用するエレメントがあることを発見しました。それらの領域にはそれぞれEts family 転写因子、AML-1a (RUNX1) のconsensus 配列があることから、それらをターゲットとしたポリアミドを設計したところ(図4a,b)、同ポリアミは培養単球細胞株J774A.1 におけるFc受容体γの発現を有意に抑制すること(図4c, 表1)、マウスに投与した場合、末梢血中の単核球における同遺伝子の発現を抑制することが確認できました。

  現在はこのポリアミドを用いて、免疫副抗体関連腎炎の動物モデルに対する治療効果を検証中である。

図4

Kajiwara M, Ueno T, Fukuda N, Matsuda H, Shimokawa H, Kitai M, Tsunemi A, Fuke Y, Fujita T, Matsumoto K, Matsumoto Y, Ra C, Soma M. Development of PI Polyamide Targeting Fc Receptor Common Gamma Chain for The Treatment of Immune-Complex Related Renal Disease*7. Biological & Pharmaceutical Bulletin, 35(11), 2028-2035, 2012.