日大医学雑誌

定位脳手術の MRI 画像誘導装置を用いた脳内マッピング

画像診断

著者

加納 利和  永岡 右章  小林 一太  大島 秀規
深谷  親  山本 隆充  片山 容一
日本大学医学部脳神経外科学系神経外科学分野
日本大学医学部先端医学系応用システム神経科学分野

はじめに

パーキンソン病や本態性振戦などの不随意運動症,および難治性疼痛の患者を対象に,脳深部刺激療法 (Deepbrain stimulation: DBS) が広く行われている1~3).これは,脳深部に電極を留置し慢性的な刺激を行うものであり,定位脳手術の手法を用いて行われる.定位脳手術とは,頭蓋に固定した定位脳手術装置の座標を基準に,手術目標点の位置を三次元的な座標として同定し,同部位に電極留置や凝固手術を行うものである.刺激電極を留置する部位は,視床下核や淡蒼球をはじめとした脳深部構造物である.標的となる部位は小さく,かつその周辺には皮質脊髄路をはじめとする重要な神経組織が存在する.このため,電極を挿入する前にどのような経路を通って標的部位に至るかを知ることは重要である.
 定位脳手術支援システムの進歩により,MRI 上でこれらを事前に確認することが可能となり,安全かつ正確な手術ができるようになった.定位脳手術の際,われわれが用いている Leksell SurgiPlanR および AtlasSpaceR は,それを可能にしたシステムの一つであり,電極を挿入する前に,三次元的に再構築された個々の症例の MRI 上で電極の軌道のシミュレーションを行うことができる.本稿では定位脳手術における手術合併症を未然に防ぐための,MRI 画像誘導装置を用いた脳内マッピングについて報告する.