日大医学雑誌

NK, NKT 細胞株に対する β-endorphin の機能調節

原著

著者

太田 郁子1)  早川  智1, 2)  鈴木( 唐崎) 美喜1)  山本 樹生1)
1)日本大学医学部産婦人科学講座
2)日本大学医学部先端医学講座感染制御科学部門

要旨

近年,opioid を介するシグナルが中枢神経のみならず,免疫担当細胞の機能を調節することが報告される.胎盤は中枢神経や副腎髄質など外胚葉組織以外に大量の b-endorphin を産生する臓器の一つであるが,その生理的機能は明らかではない.そこで脱落膜免疫細胞の主体をなす CD56 陽性大顆粒リンパ球 (CD56 + LGL) を模倣する細胞株 MOTN-1 (NKT) ならびに KHYG-1 (NK)に対する b-endorphin の作用を検討した.MOTN-1 は構成的に opioid receptor k を発現し,少量の IFN-g を産生した.IL-2, IL-12, b-endorphin は構成的な IFN-g 産生ならびに IL-2 による IFN-g 産生を濃度依存性に抑制し,naloxone により reverse されたが IL-12による誘導は抑制を受けなかった.一方,KHYG-1 は培養の条件では opioid receptor k, d, m いずれをも発現せず,IFN-g 産生もみられなかったが,IL-2 刺激によりIFN-g 産生が誘導され,低濃度の b-endorphin により産生が増強された.しかし,高濃度では産生が抑制された.この産生調節は,naloxone による調節を受けなかった.以上の結果より b-endorphin は opioid receptor k を介し,NKT 細胞株 MOTN-1 の IL-2 により活性化される STAT5を介する IFN-g 誘導を抑制するが IL-12 により誘導される STAT4 を介したシグナルは抑制しないこと,一方 NK細胞株 KHYG-1 では IL-2 により活性化される IFN-g 産生を opioid receptor を介さないで,b-endorphin 濃度により二相性に調節することが明らかになった.

keyword

b-endorphin, NK lymphocytes, NKT lymphocytes, interferon gamma (IFN-g ), opioid receptor
b エンドルフィン,NK 細胞,NKT 細胞,インターフェロン g,オピオイドレセプター