研究部門紹介

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肝画像診断研究

肝画像診断とは、医療現場において、肝臓の状態を診断するために行われる検査のことです。肝臓は、体内で代謝に関する機能を担う重要な臓器であり、肝疾患は重篤な病気につながることがあります。肝画像診断には、超音波、CT、MRIなどの検査方法があります。肝画像診断は、肝疾患の早期発見や、治療の効果を判断するために重要な検査方法として広く用いられています。

CT検査は、放射線を使って肝臓の構造を観察する方法であり、肝臓内に異常がある場合、その異常を検出することができます。主として肝細胞癌をはじめとした肝病変の画像診断についてダイナミックCTという検査が行われており、詳細な血流診断が可能です。一方で肝機能に関しては多くの研究が行われていますが、臨床的に実用化されているものというのは少なく、今後も多くの課題が残っています。そこで当院では多くの肝疾患患者さんが来院されているということを基盤として、肝機能を評価するための画像診断研究を行っています。2021年に導入されたdual layer CTを用いて、様々な情報を得ることができます(図1)。


図1 dual layer CTから解析した各種画像
ヨード画像、原子番号画像、電子密度画像

 

MRIは、磁気共鳴を使って、肝臓の詳細な構造を観察することができます。コントラスト分解能が高いという特性、これは病変がある場合に非病変部との濃度差が良好にとらえられるという特性ですが、それをもちいて多くの画像診断がされています。肝臓についてはガドキセト酸MRI(EOB-MRI)という造影剤を用いて肝細胞の機能を知ることができます(図2)。また肝細胞機能を評価するためのソフトを用いて研究を行っています。また後述する肝臓のMRエラストグラフィは肝臓の硬さ(肝硬変になると線維化が増えて肝を硬くする)を評価するものですが、この技術とあわせて今後も肝臓のCT, MR研究をおこなっていきます。


図2 ガドキセト酸MRI(EOB-MRI)肝細胞相肝細胞機能が低下している肝腫瘍が描出されている。

 

 

 

臓器・病変の硬さを調べる

3TMRI装置を用いた肝臓のエラストグラフィ

エラストグラフィとはelasticity(硬さ)をgraphic(画像化)する手法です。
“硬さ”はその臓器の状態を知るのに重要なバイオマーカーの一つです。例えば肝臓は本来柔らかい臓器ですが、ウイルス感染やアルコールによる慢性的な障害により肝硬変に移行するにつれて硬くなってきます。肝硬変になると肝臓の機能が低下するだけでなく、肝臓癌のリスクが高くなります。また、肝臓の腫瘍では良性腫瘍は柔らかいものが多く、悪性腫瘍は硬いものが多いことが知られています。
これまで臓器の硬さを知るには体表から触診するか、あるいは手術開腹時に直接触るかしか方法がなく、また触った人によって感じ方も違う上に「前回と比べてどれくらい硬くなったか」「他人と比べて硬いか・柔らかいか」を示す絶対的な指標がありませんでした。  近年MRI装置の発達に伴い、体外から振動を与えるバイブレーターを用いることで、体内臓器の硬さを画像化できるようになってきました。MRエラストグラフィでは体表から針を刺す生検などの侵襲的な行為を行わずに、通常のMRI検査で臓器の硬さを絶対的な数値で評価することができます。また、肝腫瘍の診断では従来のMR画像に加えてMRエラストグラフィで腫瘍の硬度を評価することが腫瘍の良性・悪性を鑑別する一助となります。
当科では内科・外科と協力⇒連携しながら、正常・病的肝臓実質および肝腫瘍の硬さの測定を行い、その臨床的有用性の検討や病気のメカニズム解析を行っています。

(図3)MRエラストグラフィの画像 
左上:MRI画像、
右上:体内を伝わる振動を画像化したもの、
左下:振動を解析し臓器の硬さをカラー表示したもの、
右下:最終的な測定画像

(図4) MRエラストグラフィ検査の実際
外部加振装置で発生させた振動を腹部に装着したパッドで肝臓に伝え、肝臓内の振動の伝播をMRIの位相変化量として検出、組織の相対的な硬さ(弾性)を測定する。



IVR(Interventional Radiology, 画像下治療)に関する研究

IVRとは、レントゲン透視やCT・超音波画像を元に、カテーテルと呼ばれる細いチューブなどを用いて、体表のごく小さな傷口から病変にアプローチする治療方法です。昨今の低侵襲医療に対する関心の高まりに伴って、放射線科医が実施するIVR件数は増加しつつあります。
日本大学板橋病院放射線科のIVR部門は、血管系では主に腫瘍・血管奇形や動脈瘤に対する塞栓術や、外傷その他に対する止血術、非血管系では針生検や穿刺ドレナージを主に行っております。とりわけ産婦人科の周産期危機的出血に対するUAE(子宮動脈塞栓術)は、近隣医療機関と協力して数多く行っており、研究会への発表など行っております。これは、出血の原因となっている子宮動脈へカテーテルを進めて、ゼラチンや医療用接着剤などの塞栓物質を注入することで止血を行う方法です。子宮摘出術と比較すると妊孕性を温存できるメリットがあり、実施できる状況であればUAEは有力な治療選択肢となります。
また他科との協力のもと、肝細胞癌に対する塞栓術や、門脈圧亢進症に対するカテーテル治療も多く行っており、様々な学会への報告を行っております。ますます高まる需要に応え、放射線科では今後もIVRに取り組んでまいります。

図1 子宮動脈塞栓術
子宮動脈を同定して、カテーテルを挿入して止血を行います。

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