輸血に関する説明書

 
【はじめに:血液を使用する輸血とは】
 血液は大きく細胞成分(赤血球、白血球、血小板)と血漿成分(蛋白成分、凝固因子)に分けられます。赤血球は身体の中に酸素を運ぶ役目を、白血球は細菌やウイルスなどの侵入を防ぎ自分の体を守る働きを、血小板は血漿成分と協同して止血に働きます。これらの血液成分を治療に使うのが輸血療法です。輸血は患者さんの血液成分の量が減少したり、あるいは働きが十分でなく生命維持が難しい時に行う補充療法です。多くの輸血は他人から頂いた善意の血液で行われ、一般の治療薬とは基本的に違います。日本赤十字社ではいろいろな検査を実施し、安全な血液を供給していますが、後で述べる輸血副作用が起きる場合もあります。したがって、主治医は常に輸血の有効性と問題点の両面を考え輸血を行います。
 

1.輪血の適応と輸血を受けない場合の問題点に関して

2.輸血の選択肢に関して

3.同種血輸血の問題点と輸血に関する検査について

4.自己血輸血に関して

5.緊急時の対応に関して

 
 
1.輪血の適応と輸血を受けない場合の問題点に関して
 
 1)事故や手術で大量出血がある場合
赤血球を初めとして血液成分が減少すると、血圧低下、重要な臓器(脳、肝臓、腎臓、心臓など)ヘの酸素の供給不足や出血傾向が生じ生命が危険になります。
 2)自分自身で必要な血液成分を作れない場合
赤血球や血小板などが自分で十分に作れないと酸素の供給不足による臓器障害や出血が止まらず生命が危険になります。凝固因子が低下している場合、新鮮凍結血漿や血液凝固因子製剤を使用しないと出血をおこすことがあります。
 
2.輸血の選択肢に関して
 
 輸血上の問題点を減らすために次のような方法も行われます。
 1)輸血を避けるための努力
血液が減少している原因に病気や血液を作る材料(鉄分、ビタミン類など)の不足などがあるかを調べ、可能であれば薬などで治療します。
 2)自己血輸血(自分からの輸血)
予定手術の患者さんで手術迄に時間があり手術時に輸血が必要と考えられる場合は、患者さんの状態により、手術の前に自分の血液を必要量保存し、その血液を手術時に使用します。しかし、緊急時や大量出血時、または病気によりこれらの対応ができない場合は同種血輸血を行います。
 3)同種血輸血(献血による他人からの輸血)
原則として必要な成分を最小量、輸血します(貧血の場合は赤血球製剤を血小板減少時には血小板製剤の輸血を行います)。しかし、以下に述べる副作用が生じる可能性があります。
3.同種血輸血の問題点と輸血に関する検査について
 
 他人からの血液製剤は日本赤十字社で現在、必要と考えられる多種類の検査を行い、合格した安全な製剤です。しかし、輸血による副作用を完全に防止することはできません。
 
 代表的な副作用として
 1)感染症
極めて稀ですが、肝炎ウイルス、エイズウイルス、成人T細胞白血病ウイルス、サイトメガロウイルス、梅毒などの感染症が検査の限界や患者さんの状態により発症する場合があります。また、未検査、未知の病原体による感染の可能性もあります。
 2)免疫反応
患者さんに血液製剤の成分と反応する物質(抗体など)があると輸血時に溶血、発熱、寒気、蕁麻疹、血圧低下や呼吸困難などの症状を認める場合があります。
 3)輸血後移植片対宿主病(輸血後GVHD)
血液製剤に含まれる白血球(免疫担当細胞(リンパ球))が患者さんの身体を他人と考えて攻撃する重篤な免疫反応が起きる場合があります。
 
 これらの輸血副作用を防止する目的で輸血前に血液型、赤血球に対する抗体のチェック(不規則抗体検査)、最終的な相性を見る交差適合試験などを行います。輸血後GVHDを防ぐために血液製剤に放射線照射を行っていますが緊急時や大量輸血時には照射が間に合わない場合もあります。尚、輸血後の健康管理のため、輸血2〜3ケ月後にエイズウイルスを含めて検査を行わせて頂く場合もあります。
 
副作用発生率(約10本輸血されたとして)は、およそ以下の様に推測されます
(日本輸血学会インフォームド・コンセント小委員会資料1997.3 他)
 @輸血後B・C型肝炎:1/1万〜1/10万
 A工イズ感染:1/200万以下
 B輸血後GVHD:1/2万〜1/10万
 C溶血反応:軽症1/1000、重症1/1万
 Dアレルギー、蕁麻疹、発熱:1/20〜1/100重症1/1万
  しかし、これらの数値は変わる可能性が有ります。
4.自己血輸血に関して
 
同種血輸血による副作用をできるだけ防ぐ目的で可能ならば自己血輸血が望ましいと考えられます。
 1)自己血輸血の方法
@貯血式自己血:手術時に必要と考えられる輸血量を基本に、患者さんの体重、赤血球量から保存する血液量を決めます。採血量は一回に200〜400mlで一週間毎に数回採取します。採取から手術までの期間が長い場合は採血した血液を戻しながら保存を行うスイッチ・バック方式を用いる場合もあります。
自己血輸血では鉄剤の服用をして頂く場合があります。しかし、副作用(吐き気などの消化器症状)で服用が困難な時は注射で鉄を補給します。採血量が多い場合は赤血球造血因子であるエリスロポエチンを注射で使用する場合もあります。
A回収式自己血:手術時や術後に出血した血液を機械やバックで回収し輸血します。但し、疾患や手術の種類によりできない場合もあります。
 2)自己血採血時の間題点
採血時に一時的にめまい、冷汗、吐き気などの症状が出現することがあります。安静にすることにより改善がみられますので心配せずに主治医の指示に従ってください。また、患者さんの年令、体重により点滴をさせて頂きながら採血をする場合もあります。一回目の採血後、患者さんの状態や血液検査の結果を見ながらその後の採血を継続するかを決定します。したがって、予定の採血・保存ができない場合もあり、このような時は献血血液を準備させて頂きます。
 3)自己血の管理および手術時の使用血液に関して
採血した血液は責任を持って輸血室が管理します。しかし、稀にバックの破損や細菌汚染が生じる場合もあり、このような時には自己血は使用できません。また、手術中に予想以上の出血が見られた時には必要に応じ献血血液を使用させて頂きます。
 4)未使用の自己血の扱いに関して
保存した血液が何らかの事情により使用されない場合、有効期限後は処分させて頂きます。
5.緊急時の対応に関して
 
緊急事態発生時には、主治医は患者の生命維持を第一に考え、輸血を含めて対応させて頂きます。
 
 
ここに述べさせて頂きましたのは輸血療法の一部です。ご不明の点がありましたら、
主治医ないし輸血室医師に何なりとご質問下さい。
 
輸血療法に御納得頂けた場合には輸血同意書に御署名をお願い致します。