腎盂尿管癌の症状と治療【日本大学医学部 泌尿器科】

腎盂尿管癌

1、腎盂尿管癌とは

  • 腎盂尿管の解剖
    腎臓でつくられた尿は、まずに腎臓内の腎盂に集まり、それから尿管を通過して膀胱に溜められます。 その後、排尿すると、尿道を通って体外に排泄されます。この腎盂から尿道までを尿路と呼び、さらに 腎盂・尿管を上部尿路、膀胱・尿道を下部尿路と呼びます。 尿路の粘膜は、ほぼ全体が移行上皮という同一の上皮で覆われています。
  • 発生頻度
    腎盂尿管がんは、泌尿器科領域で見られる癌の中でも比較的稀で、膀胱がんと比較すると発生頻度は 約1/10です。男女差2〜4:1とやや男性に多く、50〜70歳代に好発します。診断時に約10-20%は リンパ節や肺、肝臓、副腎、骨に転移しています。
  • 原因(危険因子)
    喫煙について関連が指摘されており、喫煙者は非喫煙者に比べて発がんのリスクが高いと言われています。

    その他に鎮痛剤(フェナセチンなど)の長期服用、抗がん剤(シクロホスファミド)、 染料・塗料(ベンジン)、上部尿路の慢性炎症(尿路結石などによる)などが発がんの危険因子です。
  • 病理組織学的特徴
    病理組織学的には、90%以上が移行上皮がんで、膀胱がんと同様です。移行上皮がんの特徴は、 尿路に同時に多発することや後で再発することです。腎盂尿管がんの治療後には30-40%程度、 膀胱がんの発生がみられます。ただし、両側に腎盂尿管がんが発生することは稀です。

    移行上皮がんの異型度はGrade 1、2、3と3段階に分類され、Grade 1は異型度が低く あまり進行しないおとなしいタイプです。Grade 3は異型度が強く早期に進行し転移を起こしやすいタイプです。

2、腎盂尿管癌の症状

最も多いのが肉眼的血尿です。随伴症状を伴わず突然尿に血が混ざることが特徴です。 膀胱炎などでは排尿痛や頻尿、残尿感などの症状を伴って血尿がみられますが、 これらの随伴症状がなければ尿路のがんを疑わなければなりません。

腎盂尿管がんでは、血塊や腫瘍が尿管を閉塞させて、腰背部痛や側腹部痛を起こすことがあります。 健診で尿潜血陽性や水腎症(上部尿路の通過障害の状態)を指摘されて検査で発見されることもあります。

3、腎盂尿管癌の診断

  • 尿細胞診
    尿中の移行上皮細胞を顕微鏡で確認する検査です。この検査でがん細胞が確認されると、 膀胱がんもしくは腎盂尿管がんが存在します。 陽性率は50-60%程度で、異型度Grade 3の移行上皮がんは陽性率が高い。
  • 内視鏡検査
    肉眼的血尿時、外来で膀胱鏡検査を行います。まず膀胱内を観察し、膀胱がんの 有無などを確認します。腎盂尿管がんでは、左右どちらかの尿管出口から血尿が出てくる ことが観察されます。また、腎盂尿管がんが疑わしいときには、入院し麻酔下に 腎盂尿管鏡検査を行います。がんの有無を観察し、時に粘膜組織を採取し、病理組織検査を行います。
  • 排泄性(静脈性)尿路造影:IVU
    造影剤を静脈内に注射し、腎臓から尿中に排泄される時間に合わせて数枚 レントゲン撮影をします。造影剤が混ざった尿がレントゲンに白く写り、 尿路の形態、尿の流れを観察します。がんの部位は造影剤が抜けて写ります。 また尿管がんの場合、尿の停滞が起こり、腎盂や上部の尿管の拡張像(水腎症)や 尿の排泄不良像がみられます。腎盂尿管がんの症例の90%以上で異常所見がみられ、重要な検査です。
  • 逆行性腎盂造影:RP
    IVUで上部尿路がはっきり造影されない時などに行います。膀胱鏡を用いて 腎盂尿管に管を挿入し、管から造影剤を注入し、上部尿路の形態を観察します。 がんの部位は造影剤が抜けて写ります。このとき、管から出てくる尿を集めて尿細胞診に 提出します。管が上部尿路に挿入できない場合もあり、このときには、背中の皮膚から 腎盂に直接針を刺して造影検査を行うこともあります。
  • CT、MRI検査
    IVUなどで異常が観察された部位をさらに検索します(尿路結石や腎がんなどの疾患との鑑別診断)。 また、腎盂尿管がんの大きさや広がり、リンパ節転移の有無なども観察します。
  • 超音波検査
    簡単に腎盂がん、水腎症、膀胱がんなどの有無などを観察します。 ただし詳細は確認できず、単独での診断は困難です。初期検査として有用です。
  • 腫瘍マーカー
    今のところ有用な腫瘍マーカーはありません。定期的な健診で尿検査や 超音波検査を受けることが早期発見につながります。

4、腎盂尿管癌の治療

  • 腎盂尿管全摘除術及び膀胱部分切除術
    転移のない症例であれば基本的に手術を行います。手術はがんのある側の腎臓及び尿管をすべて摘除し、 さらに膀胱に開く尿管の出口も膀胱壁とともに切除します。これが上記手術です。移行上皮がんは、 多発性・再発性が特徴のため、腫瘍部のみの切除は基本的には行いません。
  • 保存的手術療法
    両側性に発生した場合や片方しかない腎臓の尿路に発生した場合は、腫瘍部のみの切除や内視鏡手術を行います。 また、表在性で悪性度の低い単発のがんであれば、内視鏡手術を行なうこともあります。
  • 抗がん剤治療(化学療法)
    転移のある症例では、抗がん剤の投与が第1選択となります。治療効果をみて手術や放射線照射を 併用します。また、転移のない進行がんの場合も、手術前に腫瘍を縮小させる目的や手術後に 再発を予防する目的で、抗がん剤治療を行うことがあります。しかし、この場合の治療効果について、 はっきりとした結論がでていないのが現状です。
  • BCG(弱毒結核菌)の注入
    表在性がんに対する保存的治療として、弱毒結核菌であるBCGを尿路に注入する方法があります。
  • 放射線療法
    他の疾患等により手術が受けられない場合や、転移のある症例に対して行うことがあります。

5、治療の副作用

  • 手術療法
    腎臓が1つになっても、通常腎機能低下を起こすことは稀で、普段の生活を維持することは可能です。 手術時には一般的に出血、疼痛、感染などの合併症がみられます。
  • 抗がん剤治療
    腎盂尿管がんでは、シスプラチンという白金製剤を中心に数種類の抗がん剤を投与します。
    副作用は吐気、嘔吐、食欲不振といった消化器症状が主症状です。他に口内炎、腎機能障害、肝機能障害、 脱毛、手足のしびれ、難聴などがみられることがあります。

    また、抗がん剤投与後1〜2週で、 血液中の白血球減少などの骨髄抑制が起こります。白血球が減少すると、肺炎などの感染を起こしやすくなり、 注意が必要です。これらの副作用は、制吐剤や白血球の産生を促進させる薬などを投与することで軽減できます。

6.治療後の経過、予後

表在性がんの予後は良好で、5年生存率は90%以上です。ただし、手術後に30-40%程度、 膀胱がんの発生がみられます。このため定期的に膀胱鏡検査を行い、再発の有無を調べる必要があります。

進行がんでは、腎盂・尿管の壁が薄いため、がんの壁外へ浸潤が起こり易く、転移を起こす 可能性が強くなります。このため同じ移行上皮がんでも、膀胱がんに比べて予後は不良です。

手術後には定期的に胸部・腹部CT検査などで、がんの転移を確認する必要があります。 転移のない進行がんの5年生存率は、20-50% 程度です。転移のあるがんでは、2年生存率が10%以下と極め不良です。


日本大学医学部 泌尿器科学系泌尿器科学分野

〒173-8610 東京都 板橋区 大谷口上町30-1
TEL 03-3972-8111(代表) FAX 03-3972-0027


日本大学医学部 泌尿器科

東京の泌尿器の専門医

日本大学医学部 泌尿器科学系 泌尿器科学分野

この ホームページは、Web標準準拠で制作 されております。

xhtml

css