日本大学医学部 総合医学研究所 研究紹介

研究プロジェクト

難治性免疫・アレルギー疾患の病態の解明と新規治療法の開発

医学部教授 照井正

罹患率が増加し社会問題にもなっている免疫・アレルギー疾患は、遺伝因子と環境因子が複雑に関与した多因子疾患である。近年、疾患モデル動物の解析により免疫・アレルギー疾患の病態の解明が進み治療法の開発が進んでいるが、未だに既存の治療法では効果が少ない難治例が存在する。難治例の病態解明には、個々の疾病の臨床検体からの取り組みが必須である。本事業は、免疫・アレルギー疾患を扱う六つの臨床各科のベットサイドから得られた臨床検体を基に臨床医、免疫・アレルギー学者と生物学者が連携し研究拠点を形成し、難治性免疫・アレルギー疾患の予防と治療に資する研究を行うことを目的とする。具体的な目的は、1.免疫・アレルギー疾患の病態におけるマスト細胞の役割の解明 2.感染による関節リウマチの発症と増悪の機序の解明 3.疾患バイオマーカーの同定である。具体的な研究内容は、以下の通りである。1.免疫・アレルギー疾患の病態におけるマスト細胞の役割の解明 ①重症の慢性蕁麻疹(CU)患者のマスト細胞に高発現している分子としてGタンパク質共役型受容体に属するMas-related gene X2(MrgX2)を同定した。そのリガンドとして好酸球顆粒タンパクを同定した(J Allergy Clin Immunol 134:622, 2014)。また、免疫複合体刺激によって関節リウマチ(RA)の滑膜マスト細胞がFcγRIとFcγRIIAを介して多量のTNF-αを産生することを見出した(Arthritis Rheum 65:109, 2013)。このようにマスト細胞が炎症の場で中心的役割を果たす免疫・アレルギー疾患においてマスト細胞は形質を変え悪玉化している。マスト細胞は骨髄より前駆細胞が組織へ移行し、組織で成熟する。線維芽細胞から産生されるprostaglandin D2によってマスト細胞は成熟することを我々は報告した(Nat Immunol 14:554, 2013)。したがってマスト細胞は、炎症の場の微小環境からのシグナルにより、形質を変えるという仮説をたてた。CU、尋常性乾癬(PV)、アトピー性皮膚炎(AD)、気管支喘息(BA)、RAおよび流産の炎症の場を再現するため、各疾患に対応した刺激を与えた線維芽細胞や上皮細胞とマスト細胞を共培養することによってマスト細胞の機能がどのように変化するかを検討する。病態に関連する分子(特に受容体)を同定し、その分子の発現や活性化を制御する機序の解明を行う。生検や手術組織で結果を確認する。流産の脱落膜のように組織からマスト細胞を分離可能な疾患では、疾患マスト細胞と健常人のマスト細胞に発現している遺伝子を網羅的に解析する。2.感染によるRA発症と増悪の機序の解明 ①EBウイルス感染によって惹起されるヒト免疫化マウスびらん性関節炎モデル (PLoS One 6:e26630, 2011)を用いてEBウイルス感染制御遺伝子 signaling lymphocytic-activation molecule-associated protein (SAP) 遺伝子の発現と病態との係わりを明らかにし,SAP遺伝子による診断法の確立とSAP分子の制御による治療法を確立する。②歯周病とRAの関連の解明。3.疾患バイオマーカーの同定 ①BAに移行する乳幼児の鼻汁中ケミカルメディエーターの同定②喘息の難治化や、喘息から移行するCOPDの予測因子の同定。特にエクソソーム(細胞から分泌された脂質二重膜で形成される直径40~100nmの小胞)内のDNAとRNAの解析を行う。

参加者

  • 医学部・教授 照井正
  • 医学部・教授 山本樹生
  • 医学部・教授 武井正美
  • 薬学部・教授 木澤靖夫
  • 医学部・准教授 斎藤修
  • 医学部・准教授 権寧博
  • 医学部・准教授 北村登
  • 医学部・准教授 千島史尚
  • 医学部・准教授 藤田英樹
  • 医学部・准教授 岡山吉道
  • 歯学部・准教授 浅野正岳
  • 生物資源科学部・准教授 高橋恭子
  • 医学部・助教 丸岡秀一郎
  • 医学部・助教 葉山惟大
  • 医学部・助教 布村聡
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