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認知療法

1)認知療法とは,どんな治療法か

認知療法は,うつ病や不安状態にある方々は,健康なときに比べると状況を多面的に解釈することが困難になっています。その考え方のパターン(認知)を,適応的・現実的な考え方に変えていくことによって治療効果を得ようとするものです。

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また,認知療法は,『セルフヘルプ』の精神療法と言われます。大切なのはご自身が治療に参加することです。ご自分の心の問題を解決していくことに,あなたご自身が積極的になることが必要となります。最初は大変かもしれませんが,少しずつでもご自分の心の問題に取り組んでいこうとする姿勢が大切です。認知療法では,治療者と患者の共同的な治療関係の上に成立します。治療者とクライエントはチームを形成し,役割と責任を分担しあいながら同じ目線で問題解決に関わっていきます。

2)認知療法では考え方(認知)をどう扱うのか

認知療法では,人の認知(思考・考え方)は『スキーマ』・『認知の歪み(論理上の誤り)』・『自動思考』の3つが階層のようになっていると考えます。

スキーマ

その人その人が経験してきたことから自分なりに導き出した「信念(体系)」のことです。心の奥にあって認知の歪みをもたらして,自動思考を作り出す基になります。例えば,小さい頃に犬に噛まれたことがある人は,「犬=怖いもの」として自分の中にカテゴリー化しているでしょう。反対に,小さい頃から犬と一緒に暮らしてきた人は,「犬=家族・大切なもの」として自分の中にカテゴリー化しているでしょう。このように,同じものであっても個人個人によってスキーマは変わってきます。

認知の歪み

スキーマに基づいて起こる論理上の誤りのことです。先ほどの例で言えば,小さい頃犬に噛まれたことがある人が,道で犬に出会ったとします。するとその人は「あの犬に噛まれるにちがいない。」,「犬はすべて私に噛み付くはずだ。」などと思ったり,考えたりするかもしれません。噛まれるかどうかわからないのにです。

自動思考

日常生活のありとあらゆる場面で抱く様々な考えやイメージのことです。「楽しいなあ。」,「悲しいなあ。」,「お腹が空いたなあ。」などその時その時に思っていること,考えていること,それが自動思考です。先ほどの例では,道で犬に出会った時に,「怖い!逃げよう。別の道から行こう。」などと考えるかもしれません。

この3つが次のように関連しています。心の奥にあるスキーマが,認知の歪みをもたらして,自動思考を生み出す基になるのです。そして,認知の歪みが自動思考として反映されます。

3)認知療法は,どのように進められるのか

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認知療法では,モノの見方はいくつも存在すること,その中には否定的思考よりも適応的・現実的な視点が存在しうることをご自身が自覚できるように援助していきます。面接では,認知的技法(7つのコラム法・活動記録表・認知的再構成法など)と行動的技法(呼吸法や自律訓練法を用いたリラクゼーション法・行動リハーサルなど)を組み合わせた様々な治療技法を用いて,否定的思考に対する確信度を減らすことを繰り返し試みていきます。

クライエントの思考がいつも不合理であるとはかぎりません。それが現実を正確に反映しているときもあります。そのような場合には,問題となる状況そのものを改善したり,クライエントの対処技能(コーピングスキル)を向上させたりすることが必要になってきます。認知療法では,日常生活が治療の場となります。に与えられる『宿題(ホームワーク)』は,認知療法が奏功するためには必須の課題となります。

治療を始めるに当たっては,あなたご自身の心の問題に認知療法が活用できるかを医師とご相談されることをお勧め致します。

診療科から

精神神経科の外来医長が対応します。

電気けいれん療法(electroconvulsive therapy: ECT)

電気けいれん療法(electroconvulsive therapy: ECT)は頭皮上電極から通電を行って脳内にけいれん発作発射を起こさせて精神症状の改善を図る治療です。

1930年代に始まったこの治療はうつ病や他の精神疾患に高い有効性が確認されており,最近では慢性疼痛やパーキンソン病などにも効果があることが明らかとなってきています。その技術は黎明期と比較して格段の進歩を遂げました。

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1950年代からは,修正型電気けいれん療法(modified electroconvulsive therapy: mECT)が開発された。このmECTでは,通電前に静脈麻酔を施し,呼吸循環管理下で筋弛緩薬を投与して通電を行う方法を採用し,骨格筋のけいれんを回避し,骨折の危険性が著しく低下させることに成功しました。また心循環系のモニターを連続的に行うことで,誘発されたけいれんの前後における種々の身体的な合併症に迅速に対処できるようになりました。

欧米では1980年代から定電流短パルス矩形波治療器が従来のサイン波型定電圧治療器に代わって用いられるようになり,より少ない電気量で発作誘発ができるようになりました。これにより,患者さんそれぞれの発作閾値に合わせた刺激用量の調節が可能となり,脳への侵襲が減り,発作後のせん妄状態や一過性の認知機能障害などの副作用は著しく減少しています。我が国でも2002年に医療機器として正式に認可され普及しつつある医療技術です。

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我々は精神症状や年齢,身体合併症の有無などからより効果が高いと予測される症例に対しては薬物療法に優先して早期にECTを導入し,短期間に目覚ましい治療効果をあげることに成功しています。さらにECTの効果を維持するために薬物療法や精神療法の効果的な組み合わせの開発に取り組んでおり,さらに高い治療効果を目指しています。

当科ではECTの技術トレーニングはは精神科臨床教育の早期から開始されるため,この技術に習熟したスタッフが多数おります。また,麻酔科との密接な連携により安全,確実に施行されています。

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精神神経科部長
内山 真

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精神神経科の外来医長が対応します。

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