診療科の話題

診療科トピックス 耳鼻咽喉科

診療科の話題

耳鼻咽喉科では,みみ・はな・のどの多岐にわたる疾患に対して幅広い治療を行い,さらに先進的な医療を展開しています。東京都内、さらに近県より多くの患者の皆様が受診しています。以下に当科で行っている医療について説明いたします。ご不明の点がありましたら、お問い合わせは板橋病院代表電話番号にお掛けください。

1.耳科手術

耳科手術の代表的として中耳炎に対する鼓室形成術があげられます。当科では鼓室形成術が開発された当初からこの手術に取り組み、現在は慢性中耳炎に対する日帰り手術、重症慢性中耳炎に対する入院による鼓室形成術、難治の真珠腫性中耳炎に対する2期的外耳道再建手術を行い、聴力の改善、耳漏停止によるQOL改善に大きな成果をあげています。さらに内視鏡を積極的に使用し成功率の改善に寄与しています。

こうした年間100例近い中耳手術に加え、アブミ骨手術、外リンパ瘻閉鎖術、人工内耳手術、聴神経腫瘍摘出術といった繊細な手技を必要とされる内耳の手術を行っています。さらに最近では上半規管裂隙症候群に対する手術も行っています。上半規管裂隙症候群はめまい、音への過敏を主症状として、耳を触るとめまいがすることが特徴で、半規管の一部が頭蓋底に突出しているため起こります。

2.耳管開放症

最近、自声強聴(自分の声が響いて聴こえる)などの症状で医療機関を受診する方が増えています。このような症状は耳管の障害によることが多いですが、他の医療機関では「治療法がない」と告げられていることが少なくありません。当科ではあらゆる角度から耳管機能を詳細に評価したうえで治療方針を決定します。難治性の耳管開放症に対しては耳管ピン手術(自費診療)も行っているのでご相談ください。

3.難聴・耳鳴

高度難聴に対する人工内耳の埋め込み手術、新生児聴覚スクリーニング後の経過観察や乳幼児難聴・遺伝性難聴の診断を行っています。補聴器に関しては、よりその人に合った機器の装用を目指し、補聴器適合検査を行ったうえで補聴器装用して頂いています。

難治性耳鳴に対してはTRT (Tinnitus Retraining Therapy)治療を行っています。 これは「脳を耳鳴の音に順応させるように訓練する方法」です。カウンセリング、認知療法を行うとともに、聴力正常または軽度難聴の場合はTCI治療器(Tinnitus Control Instrument=耳鳴治療器)を装用して頂きます。難聴の自覚のある中等度以上の難聴の方には補聴器によるTRTを施行しています。

一側性難聴患者や難治の音響過敏への対処も行っています。一側性難聴患者は通常の会話は問題なくできますが、騒音環境下や難聴側からの音を聞き取る能力が低下しており、実際の生活環境下ではしばしば強い難聴感をきたします。難聴側の補聴、骨導補聴器が使用され、最近では一側高度難聴患者における人工内耳の使用も始まっています。

4.めまい

「めまい」とは、ぐるぐるまわる感じ、ふわふわする感じなどと表現されるように、異常な身体の平衡感覚を生じてしまうことです。私たちの平衡感覚は耳にある平衡感覚器、眼からの視覚、足の裏からの体性感覚という3つの感覚器からの情報でコントロールされ、自分がどこにいるのか、どのように動いているのかを感じます。3つの感覚器からの情報は小脳・脳幹部がまとめています。これらの一つでも異常をきたすとめまいを感じます。その中でも耳の平衡感覚器の異常の頻度が最も多いとされます。耳を原因とする代表的な4つのめまい疾患について説明します。

良性発作性頭位めまい症

数あるめまい疾患のなかで最も多い疾患です。寝返りや起床時に上半身を起こした際などに数十秒~1分程度のまわるようなめまいを感じます。耳石という炭酸カルシウムの結晶が半規管内に入り込んでしまっていることが原因と言われ、薬物治療のほかに頭を動かして耳石を元に戻す体操などが行われます。

めまいを伴う突発性難聴

難聴を突然発症する疾患ですが、3~5割にめまいを伴います。難聴に対して早期に薬物治療を行う必要があります。めまいの程度は様々ですが、その多くは発症から数日程度で軽快します。

メニエール病

数分~数時間持続するめまい発作を繰り返し、変動する難聴・耳鳴を伴います。平衡感覚器である内耳がむくんでしまう内リンパ水腫が原因と考えられています。ストレスが深く関わっているため、薬物治療に加えて、ストレスを軽減することが必要です。

前庭神経炎

発症から2~3日は強いめまいと吐き気を感じますが、徐々にめまいは軽快して体動時のふわふわした感覚が続きます。難聴、耳鳴はありません。発症早期には安静と制吐剤などの薬物療法を行います。慢性期にはリハビリテーションが必要となることもあります。

めまいの治療には原因となる病態を把握しなければなりません。しかし、受診時にはめまいが治まっていたり、患者さん自身がめまいの訴えを正確に説明することが難しいこともあります。われわれは丁寧な対応に努め、正確な診断に基づいた上で、一人一人の患者さんの状況を考慮した満足度の高い診療を行うよう心がけています

5.頭頸部癌

頭頸部癌は世界では6番目に多い悪性腫瘍です。頭頸部とは、鎖骨から上の外科的領域(脳と眼球を除く)です。対象臓器は聴器・鼻・副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・気管・唾液腺・甲状腺などです。この領域で手術が施行されると、整容変形(例:鼻副鼻腔癌における眼球摘出を伴う顔面変形)と機能障害(例:喉頭摘出に伴う失声)を生じます。これらが患者さんをうつ状態に陥らせ社会復帰を遠くしています。特に喉頭は社会との窓口として最も重要な臓器であり、多くの著名人が喉頭摘出を拒み生命を落としてきました。

従来、頭頸部癌における生存率の向上と臓器の機能的温存率は相反する課題でした。われわれは従来の腫瘍外科の概念を変え、原発巣に対しては可能な限り保存的に治療し、頸部リンパ節に対しては徹底した頸部郭清術で対応しています。その結果、機能的臓器温存率の向上と共に生存率の向上が可能になっています。

6.鼻副鼻腔炎および関連疾患

鼻副鼻腔疾患には、代表的には、慢性副鼻腔炎や鼻副鼻腔腫瘍、術後性頬部嚢胞、鼻中隔弯曲症などが挙げられます。副鼻腔炎とは、俗に蓄膿(ちくのう)症と呼ばれている炎症性疾患です。鼻腔に連なる副鼻腔という空洞の炎症により、鼻汁や鼻閉などの様々な症状が出ます。

薬物治療のほかにネブライザーや鼻洗浄などの鼻処置による保存的治療を行います。しかし、改善の見られない場合に、内視鏡を用いた低侵襲の鼻副鼻腔手術を行います。当科では手術は原則として全身麻酔で行っているので、手術中に痛みや恐怖を感じることがありませんのでご安心ください。なお、内視鏡を用いた手術は、アレルギー性鼻炎、鼻副鼻腔腫瘍、術後性上顎嚢胞、鼻涙管狭窄症などにも行われます。

鼻副鼻腔腫瘍には、良性と悪性があります。良性には、乳頭腫や血管腫、骨原性腫瘍などがあります。乳頭腫は癌化することもあるので手術が必要となります。悪性には、鼻副鼻腔癌、鼻副鼻腔内の悪性リンパ腫などがあり、腫瘍の性状、進展範囲はもちろん、患者さんの状態に応じた治療を提供します。

術後性上顎嚢胞とは、副鼻腔炎手術の術後数年から数十年を経て頬部に嚢胞ができる疾患で、頬部の腫脹や疼痛などの症状が出ます。手術が必要です。

鼻中隔弯曲症とは、鼻内の中央にある、鼻中隔という板が大きく曲がっている状態で、鼻閉などの原因となります。内視鏡を用いた鼻内手術により鼻中隔の曲がりを矯正します。

7.アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉を3主徴とするアレルギー疾患の一つであり、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)と通年性アレルギー性鼻炎に分けられます。アレルギー性鼻炎の患者さんは1998年から2008年の10年間で約10%も上昇しており、現在日本人の4人のうち2人は、何らかのアレルギー性鼻炎を発症し、1人が予備軍であるといわれております。

近年、鼻腔から肺までを一つの連続した器官と捉え、診断、治療をすすめるone airway, one diseaseという概念が注目されるようになりました。実際に、喘息患者でのアレルギー性鼻炎の合併率は80%前後であり、合併率が高いだけでなく、喘息の症状や、喘息の発症にも影響します。喘息の患者さんでアレルギー性鼻炎を伴う場合は、鼻炎に対する適切な治療により鼻炎症状の改善だけでなく、喘息症状の改善につながります。

発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉の症状があり、鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または抗原特異的IgE検査)、鼻誘発テストのうち2つ以上の検査で陽性の場合、アレルギー性鼻炎と診断されます。当科では、患者さんから現在の症状をお聞きした上で、診察、検査を行います。まずは検査でご自分が何に対するアレルギーなのかを知っていただきます。治療は抗ヒスタミン薬などの内服やステロイド点鼻のほかに平成27年からスギ花粉症に対する舌下免疫療法を導入しました。これは毎日の内服を必要とする根気のいる治療法ですが、継続している患者さんの満足度は高く、また、鼻炎のみならず喘息に対する改善効果も見込まれ、one airway, one diseaseに合致した新しい治療法です。

8.味覚・嗅覚障害

味覚障害とは、味覚に何らかの異常が生じる病気です。味の感じ方が鈍くなる(味覚低下)、味が全く分からない(味覚脱失)、口の中に何もないのに味を感じる(自発性異常味覚)、何を食べてもおいしくない(悪味症)などの症状があります。原因として、体内の亜鉛が欠乏する亜鉛欠乏性味覚障害、薬の使用によると推測される薬剤性味覚障害、心理的な要素が関連する心因性味覚障害、糖尿病や腎機能障害などに伴う全身疾患性味覚障害、明らかな原因が特定できない特発性味覚障害などが挙げられます。当科では、血液検査、味覚定量検査(電気味覚検査・ろ紙ディスク検査)、画像検査、唾液分泌量検査、心理検査など様々なアプローチで原因の精査を行ってから、亜鉛補充療法を中心に、症例によっては漢方治療や栄養指導などの治療を行います。

嗅覚障害とは、においが鈍くなったり(嗅覚低下)、全く分からなくなる(嗅覚脱失)病気です。原因として、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎による呼吸性嗅覚障害、風邪をひいたあとに起こる嗅粘膜性嗅覚障害、頭部外傷後の中枢性嗅覚障害などが挙げられます。治療は、内服薬や点鼻薬の使用や手術療法を行います。

9.IgA腎症と扁桃摘出術

近年,IgA腎症患者に対して、口蓋扁桃摘出術にステロイドパルス療法を加えた治療法(以下、扁摘パルス療法)の有用性が報告されています。IgA腎症は自己の抗体であるIgAが腎臓における糸球体内のメザンギウムに沈着することにより腎障害を生じます。これまで一部の症例では扁桃感染後に肉眼的血尿や臨床症状が悪化することから、本症の病因と扁桃感染との関連が示唆されてきました。また、最近の研究では扁桃感染など粘膜免疫の異常が血液中の糖鎖異常IgA1増加、糸球体沈着を引き起こす可能性が示されています。IgA腎症における口蓋扁桃摘出の目的は発症メカニズムの上流にある病巣感染巣の摘出に伴う慢性抗原刺激の除去であり、加えてステロイドパルス療法を3回(当院では2ヶ月間隔で3回を基本とします。)行うことにより、尿所見の正常化(寛解)や腎不全への進展阻止を目指す治療法です。当院においても、腎臓内科と連携し、扁摘パルス療法を積極的に行なっています。

なお、当科では、慢性扁桃炎、扁桃周囲膿瘍を繰り返すもの、扁桃肥大、病巣扁桃(IgA腎症、掌蹠膿疱症)などの扁桃疾患に対して、安全かつ的確な治療ができるよう毎週扁桃に関する症例検討会を行っています。

10.唾液腺腫瘍

唾液腺は「唾液の工場」です。耳下腺、顎下腺、舌下腺のほかに口腔内には無数の小さな唾液腺組織(小唾液腺)があります。それらから発生する腫瘍が唾液腺腫瘍です。頻度が高いのは耳下腺腫瘍、顎下腺腫瘍であり、良性腫瘍の割合は耳下腺で8割、顎下腺で5割と言われています。当科ではまず頭頸部、咽喉頭の診察を行い、必要に応じて画像(CT,MRI,シンチグラム)による検査、穿刺吸引細胞診を行います。

その「できもの」が何であるのかを診断し、手術適応を含め治療方針を決めます。唾液腺の良性腫瘍として過半数を占めるのが多形腺腫であり、二番目はワルチン腫瘍です。多形腺腫は良性腫瘍ですが、15年放置すると約10%が悪性転化すると報告されています。ワルチン腫瘍は男性、喫煙者、50代以降に多いとされますが、悪性化することはほぼありません。唾液腺腫瘍の手術では顔面神経に対する取扱いが問題となります。当科では神経刺激装置を用いて神経の温存を図っています。

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