インタビュー

小林 広和 看護師

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院内感染を抑え,患者さんに信頼の医療をお届けしたい。

インタビュー 小林 広和(こばやし ひろかず)
感染管理認定看護師
1999年3月,愛知県立看護大学(現愛知県立大学看護学部)を卒業。同年4月から板橋病院に勤務し,救命救急センターに配属され,看護師として救急医療の経験を積み重ねる。2008年,感染管理認定看護師の資格を取得し,2010年4月から感染予防対策室専従者となる。感染制御実践チーム(ICT)に所属。

各部門のスタッフが参加するチームを結成し,
感染症予防にしっかりと取り組んでいます。

この数年,院内感染はニュースに大きく取り上げられ,社会的な関心事になっています。病気にかかった多くの患者さんが集まる病院は,治療の場である一方,各種の細菌やウィルスが外部から持ち込まれることから感染症が発生しやすい場であるともいえます。

そのため日大板橋病院では,医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師,臨床放射線技師,臨床工学技士などからなる感染制御実践チーム(ICT)を結成し,感染症の発生を未然に防ぐ取り組みをしっかりと行っています。私も感染管理認定看護師として,このチームの一員として活動しています。さらに日々,感染対策を専門的に行う感染予防対策室におり,患者さんや訪問者の方,病院で働くすべての人を守る役割を担っています。

いまもっとも注意しているのは多剤耐性菌と,
季節ごとに流行する菌やウィルスです。

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「多剤耐性菌」という言葉をお聞きになったことはありませんか? これは多くの抗菌薬への耐性を獲得した菌のことですが,この対策がいまもっとも重要なポイントになっています。

一般的に感染症にかかっても,抗菌薬を使えば菌は死んでしまい,病状を回復へ向けることができます。しかし,多剤耐性菌に感染した場合,使える抗菌薬が限定され,治療が難しくなるケースがでてきます。

通常の菌に比べればまれにしか存在しない多剤耐性菌は,体の免疫力が弱まった患者さんの多い病院の中では感染が起こりやすくなります。感染が拡まるケースとして,感染した人の血液や痰,尿,便に直接触ったり,間接的に触れる接触感染によるものがほとんどです。インフルエンザのようにくしゃみなどにより,遠くまで菌が拡がるわけではありません。

医師や看護師など医療スタッフが多剤耐性菌の媒介となるのを防ぐために,手指の洗浄や消毒を徹底して行うよう指導しています。また病棟や外来,検査室などを巡回して,多剤耐性菌の発生状況を調べ,その動向をきめ細かく監視しています。その結果によっては院内のある施設についてさらに徹底した調査を行い,もし急速な拡がりが確認された場合,緊急に対処するようつねに準備を整えています。

季節ごとに流行する菌やウィルスにも対策が必要です。たとえば冬には,この数年ノロウィルスが流行しています。病棟でノロウィルスによる急性胃腸炎の症状を示す患者さんがあらわれた場合,隔離するほか,同室にいた方や接触された患者さん,対応にあたった医療スタッフの経過観察などにより,感染の拡大を食い止める処置を病棟責任者とともに行います。

感染リスクが高い患者さんのケアはもちろん,
医療スタッフを感染から守る取り組みも重要です。

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感染予防対策室の仕事として,そのほかにサーベイランスという監視(調査・集計を含む)業務があります。たとえば,治療のために血管や尿道にカテーテルと呼ばれる管を入れたり,人工呼吸器を装着したり,手術などで切開した部位がある患者さんがいる環境には,感染対策リンクナースとともに感染症の発生状況の調査・集計を日常的に行い,感染症の伝播の予防に役立てています。

さらに,医師や看護師をはじめとする病院スタッフに対して,職業感染を防ぐ取り組みを行うことも大事な仕事です。注射針による針刺し,鋭利なものによる切創などは医療行為を行ううえでどうしても避られない事故ですが,発生状況を調べて作業の手順変更や医療器具をより安全なものに変えるなどの対策をとっています。その成果が出始めており,最近,針刺し・切創事故の件数が減ってきました。

そのほか,感染防止対策講習会を開催して知識を深めてもらったり,看護手順や感染防止対策マニュアルを最新の感染対策に照らし合わせて更新する提案も積極的に行っています。また,つねに国や地域単位での感染症の発生動向に目を光らせ,伝えるべき情報をまとめたニュースレターを定期的に発行しています。もちろん,スタッフからの専門的な相談にいつでも応えています。

大きな発想から人を助けられる仕事に,
情熱を傾けて取り組んでいます。

感染症対策を専門的に扱う感染管理認定看護師は,患者さんだけでなく,ご家族の方や医療スタッフに対して,さらに環境に対しても対策をとらなくてはなりません。大きな発想から人を助けるということができるこの仕事にとてもやりがいを感じています。

そもそも私が看護師をめざしたのは,高校生の頃,自宅近くの名古屋空港で起きた航空機墜落事故を目撃したことがきっかけです。墜落・炎上している様子をただ唖然と見ているだけで,なにもできない自分が悔しくて,人を助ける知識や技術を身につけたいと強く思いました。あのときの想いが,いまでもこの仕事に情熱を傾ける原動力になっていると感じます。

感染対策の分野はまだまだやるべきことがたくさんあります。院内のスタッフ全員が感染対策に必要な知識や技術をさらに高められるように,私自身,もっと知識を得たり経験を積み重ねることが必要だと考えています。その結果,病院内で感染症,細菌,ウィルスの伝播をおさえ,患者さんや地域の方々に安全で信頼性の高い医療をお届けしたいと願っています。

(2011年8月29日 取材)

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