インタビュー

相馬 正義 医師

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「患者さんに安心して帰ってもらう」不安や疑問を残したままでは,帰らせません。

インタビュー 相馬 正義医師(そうま まさよし)
総合科(内科)部長
1979年,日本大学医学部卒業。1983年,日本大学大学院 医学研究科 内科系内科学修了。
日本内科学会認定医・指導医,日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)専門医・指導医,日本高血圧学会高血圧専門医・指導医,日本腎臓学会腎臓専門医・指導医,日本循環器学会認定循環器専門医
日本大学医学部 内科学系 主任教授,日本大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学,日本大学医学部内科学系総合内科学分野,日本大学医学部内科学系腎臓高血圧内分泌内科学分野,日本大学医学部先端医学系癌遺伝学分野

原因不明の発熱や痛みも,ここに来れば病名がわかる

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大学病院というのは診療科がたくさんあって,「どの科を受診すればいいの?」と迷ったことはありませんか。循環器,呼吸器,消化器,腎臓内科,…,内科系だけでも多くの科が存在しています。このように該当する科が分からないとき,原因不明の痛みや発熱などの症状が出たときに,「総合科(内科)」を受診してもらいます。

当科へ初診で来られた患者さんを診る時間はだいたい30分くらい,かなり長く時間をかけて診ます。患者さんの症状を見て,話をよく聞いて診察するのはもちろん,必要であれば検査をして,初診で来られた日に「あなたの病気はこういうものですよ」と診断をつけ,治療方針を決めていきます。ただし,内視鏡やMRIなどの検査が必要であると判断すれば,これは前もって予約が必要なので,当日に診断をつけられないこともあります。

私は内分泌腎臓高血圧が専門ですが,総合科(内科)には感染症,呼吸器,消化器,循環器などそれぞれの専門医がいて,あらゆる角度から患者さんを診ることができます。医療に関する広い知識が集約されている科だからこそ,迅速で正確な診断と治療方針が決定できるのです。急性期の内科的病気であれば,ほとんどここで治療が終わるケースが多いですね。

ここには,発熱,頭痛,腹痛,下痢,胸痛など,さまざまな症状の方がいらっしゃいます。最近では精神と身体,両方の辛さを訴える患者さんも多く,きちんと調べて精神的なものが原因であれば適切な科に紹介しています。

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できるだけ多くの患者さんを診察するために,一人の患者さんには,おおむね5回以内の診療で,各診療科や開業医の先生に紹介するかの判断をしています。中・長期的な継続治療をすべての患者さんに行っていると,次々に来院する患者さんを診ることができなくなってしまう。それでは,総合科(内科)の役割が果たせなくなってしまいます。だからといってすぐに「ではあとは○○科へ行ってください」というようなことはしません。他科へ紹介するのは,診療の見通しが立った患者さんや,専門医の管理や特殊な治療が長期的に必要な場合です。

地域のクリニックや病院の先生方への紹介も行っています。糖尿病や高血圧といった慢性的な病気や症状が安定している病気の場合,治療方針をきちんと決めて近くの先生にお願いをしています。患者さんにとっても,より近い病院で治療を続けられるのはいろいろな面でメリットがあります。板橋病院全体が医療連携に力を入れていて,地域の先生方とのネットワークがたくさんあるので,スムーズに行きます。

研修医とベテランがチームとなって患者さんを診る

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“良き臨床医の育成”,これは日本大学医学部の理念であり,私たち総合科の大事な役割のひとつでもあります。板橋病院の総合科の場合,最初に患者さんの話を聞き診察にあたるのは,おもに研修医です。でも,ベテランではない先生に診てもらうなんて…という心配は不要ですよ。

診察の流れとして研修医がまず診察し,診断や治療法を考え,その上で私たち指導医といっしょになって,診察治療を行っていきます。ですから私もきちんと患者さんの顔を見て診察するし,詳しいお話しもする。研修医にとっても指導医が一から十まで教えるより,実際に患者さんの声に耳を傾けたほうが大いに勉強になります。それに,実は研修医の診察はすごく評判がいいんですよ。「若い先生は素直に聞いてくれて,何でも話せます」って(笑)。患者さんもリラックスできるのかもしれませんね。

当科のスタートは,救急外来からでした。明らかな外科的疾患,または当院の特定の診療科にかかりつけの患者さん以外の,一次,二次救急患者さんの時間外の対応は,24時間体制で,すべて総合科(内科)が窓口となっています。ここはもちろん患者さんのための場所ですが,研修医の教育の場でもあります。大学病院は診療科が分化しており,研修医はそのうちのひとつの科に固定されると内科全般を勉強することができません。しかし救急だと,どんな症状の方がくるか分からないし,いろいろな病気を診察することができる。そういう場で研修してもらおうと,まずは救急外来から始まったのです。その後,患者さんを十分に診られるよう病棟ができ,昼間の救急も増えたこともあって総合科(内科)外来が誕生しました。

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ある診療科を受診したら「これはうちの専門じゃないから,○○科に行って」と,そんなエピソードも世の中には実際にある話で,ならば板橋病院で「総合診療の拠点を作ろうじゃないか!」というのも総合科(内科)ができた理由のひとつです。

救急,病棟,外来。すべてに共通しているのは,私たちのチームが一体となってカンファレンス(症例検討会)やディスカションを繰り返し,より良い診療を行っていること。これは,ジェネラリストでもあり専門医でもあるスタッフが揃っているからこそできる診療体制であり,それが良き臨床医の育成にもつながっていると思います。

モットーは「診察室を出ていかれる患者さんみんなに,
安心して帰ってもらう」こと

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病院へ足を運ぶのはなんだか気が重い,そんな方も多いでしょう。初診であれば,待合室で待っているときや診断がつくまでの間は,なおさら不安になるものです。私のモットーは「診察室を出ていかれる患者さんみんなに,安心して帰ってもらう」こと。外来というのは,限られた時間で患者さんに満足していただかないといけません。満足というのは,疑問を解決して,納得してもらうこと。もし私が患者だったら,何だか分らない説明を長々されるよりも,自分がどんな病気で,これからどのような治療をして,どれくらいで治るのか,疑問に思っていることにズバっと答えてもらいたい。私は,その日のうちにできることは100%やり,かかっている病気について,治療内容について,プロセスを追いながら分かりやすく伝える診療を心がけています。また,そうすることで,より多くの患者さんを診ることが出来るようになります。

悲しみも勇気も楽しさも生まれる仕事。
いつまでも,ずっと勉強を続けていきたい

私が医者になろうとおぼろげに思ったのは,小学校高学年か中学生の頃。当時新聞で連載していた,脳科学者・時実利彦さんの“大脳生理学”を読んで,面白いなあと感動したのがきっかけです。脳の働きについての話で,手を動かすのには脳の中で指令を出す部位が決まっているという話や,大脳のしくみなど,完全には分からないけれど,とにかく面白くて興味がわいてきた。そこからなんとなく「医者になりたい」という気持ちが芽生えました。なんとかその夢を実現しようと医大に入った時,急性腎炎を患ってしまい,ここ板橋病院に入院。自分がかかったということもあり「では,腎臓を学ぼうかな」と志し,板橋病院の第二内科に研修医として勤務することになりました。

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その頃は今のように細かく専門が分かれていなかったので,白血病,肺炎,脳梗塞などいろいろな病気の患者さんを診ました。そのなかに数十万人に一人といわれる「副腎皮質癌」にかかった30代半ばの女性がいました。まだ若く,小さなお子さんもいるお母さんで,当時はCT検査も今ほど多く行なわれていなかった頃です。私たちも最善を尽くしたのですが,残念な結果になってしまいました。第二内科では,基本的に年若いうちに悲惨な経過をたどる患者さんが少なかったので,その患者さんのことが今も心に残っています。副腎癌は症例数が極端に少ないこともあって,この病気を診たことがある医者は内分泌専門医でも少ない。私はその時の経験がきっかけで,内分泌をもっと勉強したいと思ったのです。そして今度は勉強しているうちにどんどんどんはまってしまい,内分泌専門にシフトするようになりました。


私のここ15年くらいの研究テーマは「遺伝子診断」。高血圧,心筋梗塞,脳梗塞,骨粗しょう症などの,遺伝子診断に取り組んでいます。実際に,臨床の部分まで進んできました。臨床という意味では,総合科(内科)の研修医たちも臨床経験をたくさん積んでいってもらいたい。そして,たくさんの患者を救ってほしい。私自身も臨床が好きで,興味があります。内分泌腎臓高血圧専門医としての知識や経験はたっぷりありますから,いまは総合科(内科)医としてもっと勉強をしていきたいと思っています。この勉強も,とても楽しいですよ。

(2010年10月18日 取材)

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