ダイビング健康情報No.6

シャローウォーターブラックアウト

 ハイパーベンチレーション(過換気)をして息こらえ潜水をすれば、浮上中に水面近くで急に意識を失ってしまうのを「シャローウォーターブラックアウト」と言うのはダイバーの基本的な知識としてよく知られていますが、どのようにして起こるかを正確に説明するとなるととまどってしまった経験があるインストラクターもいるかと思われます。そこで、今回はこのシュローウォーターブラックアウトがどのように起こるかを説明いたします。
 深く早い呼吸、つまりハイパーベンチレーションをすると体の中、特に血液中の酸素の分圧が高まる反面、二酸化炭素は出ていきその分圧は低下します。血液中の二酸化炭素はその分圧が高まると中枢神経の脳幹部にある呼吸調節中枢を刺激し、息苦しさを感じて呼吸を促します。二酸化炭素分圧が低下すると呼吸調節中枢が刺激されず、息苦しさを感じません。そのため、息こらえが長続きし、水中に長くいることができます。一方、血液中の酸素がある分圧以下になると酸素欠乏症の症状が出現し、さらに低下すると意識を失うようになります。深く潜ると血液中の酸素の分圧も周囲の水圧に比例して増大しますが、長く潜っているとやがてエネルギー生産のため消費されます。水中で意識消失しない程度ギリギリに酸素分圧が低下したところで浮上すると、今度は周囲の水圧の低下に比例して血液中の酸素分圧もさらに低下していきます。そして水面近くになったところで血液中の酸素分圧は意識消失レベル以下になり、水面にたどり着くまでに意識を失って沈んでいってしまい、溺れます。これが「シャローウォーターブラックアウト( Shallow Water Black-out)」と呼ばれる障害の起こり方です。ちなみに、シャローウォーターとは浅い水深の水、つまり水面近くのところを意味し、ブラックアウトとは、失神、意識消失の意味です。
 このようにハイパーベンチレーションは溺水の原因となり、たいへん危険な行為ですので、息こらえ潜水では行わないようにし、水中でムリに長く留まらないようにする注意が必要です。

STARS医学委員会