MPHという学位

 公衆衛生大学院で最も主体となる学位がMPH(Master of Public Health、公衆衛生学修士)である。この学位は元々は医学部を卒業した医師(米国では医学部が専門大学院となっているので医学博士 MD、Doctor of Medicine取得者)に対して更に公衆衛生学の知識や技術を教育するために考案されたものである。事実、例えばジョンズ・ホプキンスでの2001年度MPH授与者約220名の半数以上が医師の資格を持っている。さらに、MPHではマネージメント能力についても教育され、MBA(Master of Business Administration、経営学修士)やMPA(Master of Public Administration、行政学修士)などとともにマネージメント系の学位と見なされ、米国では病院長となるには医師であることよりこの3つのいずれかの学位を有することが問われる。MPHの課程は入学者のバックグラウンドによって異なるが、通常1年ないし2年の就学期間となっている。医師ならばたいていは1年間である。この課程では公衆衛生学全般を広く浅く学ぶようになっているが、米国の基準認定協会や英国の専門医学会などの規定でそのカリキュラムの骨格が定められている。ジョンズ・ホプキンスの場合は取得すべき80単位のうち、41ないし56単位は必修のコア・カリキュラム、残りは自由選択となっている。大学により多少の差はあるが、基準認定されるためには必修科目として統計学、疫学、環境保健、社会または行動と健康、健康政策が含まれていなくてはならない。
公衆衛生大学院ではその他にも数種類の学位も授与している。MSc(Master of Science、科学修士)は公衆衛生大学院の学科に沿った特定の分野、例えば疫学や健康政策科学について特に焦点を当てて狭く深く学んだ者に与えられる。また、履修科目単位数がMPHより少ないかわりに修士論文の提出が必要である(大学によってはMPHでも論文を書かなくてはならないところもある。ジョンズ・ホプキンスの場合は論文のかわりにIntegrating experienceというresearchのproposalが必須である)。この学位の取得者には医師は多くない。博士課程では公衆衛生学の専門家としてさらに学んで学位論文を提出して授与されるDPH(Doctor of Public Health、公衆衛生学博士)と、MSc取得の後にさらにその分野について深く研究するDSc(Doctor of Science、科学博士)、より理論的学術的な研究をするPhD(Doctor of Philosophy、学術博士)がある。DPHとPhDの違いは実践的専門職業的な論文を書くか、より理論的学術的かであるが、審査する側にも違いがあり、おおまかに言って、MPHやDPHはschool(研究科、専門大学院)のレベルで、MScやDScはdepartment(専攻学科)のレベルで、PhDはuniversity(大学全学)のレベルで審査し授与される。このような相違があるが、何といっても公衆衛生大学院の中心はMPHやDPHである。

© Satoru HARANO, MD,PhD,MPH
Update: 1/Oct./01