治 療 的 業 務

 
血液アフェレ−シス/hemapheresis
 
 1.plasmapheresis(血漿交換)
血漿内に存在する病気の原因物質や有害物質を除去し,治療効果を期待する方法である。
  1)分離方式
 
    @ 遠心分離方式
           a.間歇式
        b.連続式
 
    A 膜分離方式
     a.単一膜分離
     b.二重膜濾過分離
            c.特異吸着法
 
  2)適応疾患
 
    @ 有効と考えられる疾患
肝不全(劇症、急性),多発性骨髄腫,重症筋無力症,家族性高コレステロール血症,薬物中毒ギランバレー症候群,慢性関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,骨髄移植(ABO不適合),腎移植拒絶,強皮症,混合性結合織病,天疱瘡,多発性硬化症,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),輸血後紫斑病など
   
    A 使用機種ならびに処置法
遠心分離法ではCOBE Spectraなどの血液成分分離装置を使用する。膜濾過法では血漿分離器などを使用する。劇症肝炎や肝不全で新鮮凍結血漿を用いる場合は循環血漿量の1〜1.5倍の交換(一回交換量3L〜4L)を行うために初回に40〜60単位を使用する。翌日のPTが30%以下ならば増量,40%以上であれぱ減量する。凝固因子の生成がない症例では60単位が必要になる場合もある。膜濾過法でも処理血漿量は同様に一回に循環血漿量の1〜1.5倍を基本にするため,約3L前後が処理量になる。回数に関しても一定のものはないが,劇症肝炎や血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)などでは連日行われる場合もある。施行後の効果を判定しながら期間,交換量を調整する。

 2.cytapheresis(血球除去)

cytapheresisは正常ドナーからの血小板などの成分採血と患者の治療を目的として血球除去を行う二種類に分類される。本項目では患者治療を中心に述べる。大きく分けて白血病などで白血球数が著明に増加した場合のleukostasisを防ぐ目的や化学療法を開始するにあたって腫瘍細胞量を減ずる目的で施行するgranulo‐cytapheresisと免疫疾患を中心にリンパ球の除去を行うlympho-cytapheresis慢性関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,多発性硬化症など)に分類される。また,最近は造血幹細胞移植としての自己末梢血幹細胞採取も行われている。採取方法は,当院ではCOBE Spectraを使用している。
 1)白血球アフェレーシス
     
        @ 白血球除去
       
白血病などで白血球数が10万/μl以上となって,血栓や凝固機能の低下および全身状態の悪化などが見られる場合や化学療法の開始前に白血球数を減らすために白血球を除去する。
        
 
        A 末梢血幹細胞移植(Peripheral Blood Stem Cell Transplantation :PBSCT)
化学療法 and/or G-CSFなどのコロニー刺激因子の投与によって,末梢血中に造血幹細胞が動員される。患者から採取する場合と供血者(ドナー)から採取する場合がある。患者からの採取では,自己末梢血幹細胞を凍結保存しておき,強力な化学療法実施後,患者に戻して造血機能の回復を早める。ドナーからの採取は,同種骨髄移植の代わりとして実施する。(造血幹細胞移植を参照) 

             B DLI(Donor Lymphocyte Infusion Therapy) 療法              

骨髄移植後の再発時にドナーのリンパ球を採取し,患者に輸注することで移植片対白血病(Graft Versus Leukemia :GVL)効果が期待できる。

             C 顆粒球輸血

ウイルスを除く細菌や真菌などの感染症を起こし,抗生物質の治療が無効で,顆粒球が減少している患者を対象とし,ドナーにG−CSFを投与し顆粒球が増加した時点で採取し患者に輸注する。   

                                                                                      

          2)血小板アフェレーシス

治療的血小板アフェレーシスとしては,血小板増多症で血栓症や出血傾向の所見がある患者に対して有効である。                  

    3)赤血球アフェレーシス(瀉血)

治療目的で真性多血症の患者に対して血液を定期的に採取し,頭痛などの自覚症状の軽減を目的にする。また,血液粘稠度の高い場合は血栓の予防として粘稠度を下げるために行われる。へモクロトーシスの患者では臓器に蓄積した鉄を遊離させる目的で行う場合もある。一回に200〜400mlの採血を行い,赤血球数を見ながら採取間隔を調整する。
最近では慢性C型肝炎に対する瀉血療法なども行っている。

        

 

血液成分分離装置(COBE Spectra)


造血幹細胞移植


1. 骨髄移植(boneG-CSF投与marrow transplantation:BMT)

強力な化学療法や放射線治療の副作用である骨髄抑制(造血幹細胞への障害)は悪性疾患に対する治療戦略上,大きな障壁の一つとして上げられる。これを解決する方法としてノーベル賞を授賞した米国のトーマス博士らにより骨髄移植の臨床手技が確立された。骨髄移植は骨髄内に存在する造血幹細胞を採取し移植(輸血)する造血幹細胞移植の一方法である。この治療的戦略を用いることにより造血組織への副作用を無視した大量の化学療法剤の投与や全身放射線照射が可能となり,抗腫瘍効果が飛躍的に上昇した。他人から行う同種骨髄移植では移植片対宿主病(GVHR:Graft Versus Host Disease)や移植片対白血病反応(GVLR:Graft Versus Leukemia Reaction)などの免疫反応が移植後生じる可能性があり,これらの免疫反応により残存する少数の腫瘍細胞が根絶し,その結果,治療成績の向上がさらに期待出来る。また,再生不良性貧血や重症免疫不全症などの造血幹細胞の質的異常疾患に対しても,正常な幹細胞と置換する根本的治療法として骨髄移植は行われている。日大板橋病院では1982年に,重症型再生不良性貧血患者に初めて骨髄移植を行った。以後,血液膠原病内科学教室と小児科学教室を中心に年間15例ほどの移植が行われている。公的な骨髄バンクも1991年12月から活動を始め当病院でも非血縁者間の骨髄移植も盛んに行われている。
2.末梢血幹細胞移植(Peripheral Blood Stem Cell Transplantation :PBSCT)

骨髄に代わる造血幹細胞の供給源として末梢血幹細胞(PBSC)がある。しかしながら,通常は末梢血中には非常に少ない数しか存在しないため,G-CSF投与によるPBSCの動員後に採取する。PBSCTはBMTに比べ,好中球および血小板の回復が早いが,急性および慢性GVHDの増加が見られる。健常人ドナーに対するG-CSF投与の安全性などについては,現在検討中であり非血縁ドナーからの採取に向けてデータが集められている。
3.臍帯血移植 
臍帯血中に造血幹細胞が存在していることがわかり,1988年に世界で初めて臍帯血移植が行われた。臍帯血中の免疫担当細胞は未熟なためGVHDの発生頻度や重症度が低く,HLAが1〜2座不適合でも移植が可能である。また,ドナーの危険や負担がない事も利点である。ただし,造血幹細胞数が少ないため移植の対象は,小児か低体重の成人に限られる。現在,日本でも臍帯血バンクが発足し,活動している。