精巣にも悪性腫瘍が発生します。精巣は精子を形成する胚細胞から成るために、悪性で あっても医学的には精巣癌と呼ばず、精巣腫瘍といいます。精巣腫瘍の種類には、胚細胞 から発生する胚細胞腫瘍、血液疾患である悪性リンパ腫、特殊な悪性腫瘍である肉腫 などがあります。
発生頻度は10万人に2〜3人で、1〜2歳と20〜40歳にピークが あります。また悪性リンパ腫の場合は中高年男性に生じることもあります。通常は 痛みを伴わないで精巣が腫れてくることで発見されます。
早期診断・早期治療が大事!
年齢的に働き盛りの人が多いこと、陰部であり羞恥心があることなどを理由に
かなり進行した状態ではじめて来院されるケースもまれではありません。しかし
ながら、早期に発見し、早期に治療すれば予後のよい病気ですから、早め受診
されることをお勧めします。
良性の病気でも精巣や陰のうが腫れることがあり、精巣腫瘍と鑑別する必要があります。
精巣腫瘍は触診と超音波検査で診断され、手術により精巣を摘出します。進行する スピード早いので、手術が先行されます。摘出された精巣は病理検査によって どのようなタイプの腫瘍か診断します。リンパ節や肺、その他の臓器に転移している 可能性があるのでCT検査で転移の有無を調べます。以下の病期(ステージ)によって 手術後の治療方針が決定されます。
臨床病期分類(日本泌尿器科学会分類)
ステージ1:腫瘍は精巣のみで転移を認めない。
ステージ2:横隔膜より下のリンパ節に転移がある。
ステージ3:リンパ節以外の臓器に転移を認める。
また精巣腫瘍(胚細胞腫瘍)のタイプによっては血液中の腫瘍マーカーが 上昇することがあり、診断や治療効果の判定に用いられます。
※以上の5つの組織型が混ざっている場合と、単一の組織型の場合があります。 一般的にセミノーマのみで構成される単一組織型をセミノーマ(広義)、それ以外の 単一組織型やセミノーマ以外の成分が混ざっているものは、セミノーマの成分が 含まれていてもノンセミノーマと称します。一般的にはノンセミノーマのほうが 予後不良であることが多いです。
ステージ1:手術のみ。その後は経過観察(定期的な腫瘍マーカーの採血検査とレントゲン検査) が必要です。またセミノーマの場合は特異的な腫瘍マーカーがないこと、放射線感受性が 高いことにより予防的な放射線治療を勧めることがあります。
ステージ2以上:抗がん剤による化学療法を行います。3週間で1コースの化学療法を 3〜4回行います。化学療法を行った後にリンパ節や他の臓器に腫瘍が残存している 場合は手術で摘出し、治療の効果を確認することがあります。
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