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対象疾患

【肝臓疾患】肝細胞がん、肝内胆管がん、転移性肝がん
肝臓にできるがんは大きく2つに分けられます。肝臓の細胞ががん化した「原発性肝がん」と肝臓以外の臓器のがんが肝臓に転移した「転移性肝がん」です。両者とも、治療は外科切除が基本です。肝細胞がん治療の特徴は背景肝の障害の有無・程度によって選択する治療法が変わることです。手術不能な症例でも経肝動脈化学塞栓療法(TACE)などの治療を組み合わせることにより、積極的に治療を行っています。肝内胆管がんは胆管にそって進展することがあるため、胆管の切除・再建が必要になることがあります。転移性肝がんは大腸癌からの肝臓への転移が多く、切除が根治を望める治療法であるため、積極的に切除しています。
尾状葉にある肝がんの切除
肝臓の深部(尾状葉)のがんに対する尾状葉の単独切除は、当科の高山教授が世界で初めて開発しました(アメリカ外科学会誌、1994年)。肝臓の深部に存在する尾状葉という領域を「リンゴの芯をくり抜くように」全切除する術式です。尾状葉と他の肝臓領域を同時に切除することができない肝硬変のある方に対して行う手術です。がんの位置が肝臓深部にあるため、他の施設で切除が難しいといわれた方でも、当科では切除が可能であることがありますので是非ご相談ください。実際、日本全国から尾状葉肝がんの患者さんが多数頭花に紹介されており、手術で多くの患者さんが元気に回復されています。
肝臓は、体内最大の臓器で約1,200g、代謝・解毒・合成など体の維持に不可欠な機能を果たしています。肝臓は肝静脈を境に、右葉(60%)と左葉(35%)に2分類されます。さらに、左葉は2,3,4番地の3つに分かれ、右葉は5,6,7,8番地の4つに分かれます。門脈と肝静脈の裏にある1番地を尾状葉(5%)と呼びます。

肝区域(肝癌取り扱い規約)

肝臓の手術をする場合、がんの所在・大きさ・個数の3要素が重要です。具体的に説明すると、この患者さんは、肝臓の8番地に3cmで1個の肝がんが存在すると診断され、手術ではその8番地を切除します。

肝臓の1番地(尾状葉)の肝がん(黒色)

背方からの尾状葉切除(高山術式)

前方からの尾状葉切除

高度進行肝がんの切除
肝細胞がんは肝臓の主要な血管である門脈に浸潤しやすい性質があります。この場合、他の治療法が効きにくく、また肝不全など致命的な状態に進展しやすいため、当科では積極的に手術を行っています。門脈の本幹に進展した肝細胞がんに対しては、肝切除と腫瘍栓の摘出を同時に行います。

巨大肝細胞がんに対する拡大右葉切除(手術前)

門脈腫瘍栓の摘出

拡大右葉切除の手術後

肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動注療法
多発肝細胞がんや肝機能が悪い方には手術ができないことがあります。このような患者さんに対しては肝動脈塞栓療法(TACE)を積極的に行っています。肝がんを栄養する動脈を選択的にスポンジで閉塞させ(塞栓)、肝細胞がんを壊死させることができ、手術が受けられない肝機能の悪い方に対しても大きな効果を上げ、手術と匹敵する患者さんも多くいらっしゃいます。1回の治療のために3~5日程度の入院が必要ですが、腫瘍が大きかったり、多数ある場合には複数回の治療を行います。当科では年間約400件の治療数があり、血管内治療のスペシャリストが治療を行っており、年間350例のTACEを施行し、日本一の治療数を挙げています(病院の実力、読売新聞)。
【膵臓疾患】膵臓がん、膵嚢胞性腫瘍(IPMN、MCN)、膵内分泌腫瘍
膵臓にできる悪性腫瘍の多くは通常の膵がん(浸潤性膵管がん)です。その他にも膵嚢胞性腫瘍や膵内分泌腫瘍などさまざまな腫瘍があります。
通常型膵癌は黄疸で発症する症例が多く、消化器内科と連携して診断や黄疸の軽減処置をした後に手術を行っています。膵嚢胞性腫瘍は検診の超音波検査などで偶然発見されることが多く、良性の段階のものと悪性の段階のもの混在しています。ガイドラインの治療法選択や組織検査結果により治療方針を決定していますが、良性の段階の膵嚢胞性腫瘍に対しては手術を行わず慎重に経過観察しています。初診時に肝臓や腹膜に転移のある転移性膵がんも増加傾向で、最も有効な化学療法も当科で担当しており、迅速な導入により効果を上げています。
【胆道疾患】胆管がん(肝門部領域、遠位)、胆嚢がん
胆管は肝臓から十二指腸までつながる、胆汁の通り道です。胆管は肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで排出する通路であり、胆管の途中には胆嚢があります。胆管と胆嚢をまとめて胆道と呼び、胆管は肝臓内の胆管から十二指腸にいたる過程で膵臓を貫通しています。この胆道にできたがんを胆道がんと呼び、胆管がんと胆嚢がんに分けられます。
肝臓の近くにできた胆管がん(肝門部胆管がん)には胆管と肝臓の切除が必要となります。膵臓や十二指腸の近くの胆管がん(遠位胆管がん)には胆管と膵臓、十二指腸、胃の一部の切除(=膵頭十二指腸切除)が必要になります。胆管がんの広がりの診断に関しては消化器内科と連携して行い、術前診断に基づいて最適な手術を行っています。
膵切除における2期手術
膵頭部がんや下部胆管がんに対しては膵頭十二指腸切除術が行われます。この手術は膵臓、胆管、十二指腸、胃を切除する大きな手術です。切除範囲が複数の臓器におよび、消化管や胆管、膵管の再建が必要になるため、全国規模のデータベースでも3~5%の手術死亡が報告されています。特に、膵頭十二指腸切除術における重篤な合併症の多くが膵液漏(膵臓と小腸の吻合部が自然に破たんし膵腋が漏れること)に由来するとされ、この合併症を回避するために様々な工夫が行われています。当科では膵液漏のリスクが高い正常膵の患者さんには膵臓と空腸の吻合をあえて行わず、初回手術の2~3か月後に膵空腸吻合を行っています。この術式では膵液が活性化されるリスクが無いため、当科では膵液漏に関連した手術死亡例は全く経験していません。患者さんの100%安全安心の手術を達成しています。

膵臓と空腸の吻合を行わず外瘻の状態にします。

初回手術から2か月後に膵空腸吻合を行います。このあとチューブを抜くと膵液が小腸に排出されるようになります。

【胃疾患】胃がん、胃GIST
胃がんはヘリコバクターピロリ菌の除菌療法や胃がん検診の普及により、その発生率は減少傾向です。当科では検診で発見される方以外にも、腹痛や食物の通過障害などで近隣の医療機関から紹介される方がいます。内視鏡やCT検査で正確に進行度を診断し、治療方針を決定しています。胃がん対する切除術は適切なリンパ節郭清と合併症の少ない安全な手術を実施しています。
一方、肝臓や腹膜に転移のある転移性胃がんの患者さんに対しては積極的に化学療法を行っています。転移性胃がんに対する抗がん剤治療は当科では豊富な実績があります。また、消化器外科医が化学療法を行うため、腫瘍が縮小した際の切除術や通過障害に対する緩和的な手術(バイパス術など)に遅滞なく移行でき、同じ担当医による診療が継続して受けられるのが強みです。

胃癌肝転移に対する化学療法(治療前)

(治療後)

【大腸疾患】大腸(結腸、直腸)がん
大腸がんは食習慣の欧米化により増加傾向のがんです。大腸がんの切除方法には、その進行度に応じて、内視鏡切除、腹腔鏡下手術、開腹手術があります。内視鏡切除は消化器内科が担当していますが、内視鏡切除の適応とならないステージIIまでの大腸がんに対しては腹腔鏡下手術を行っています。腹腔鏡下手術のメリットは創が小さいため術後の回復が早く、拡大した術野をモニターしながら手術を行うため、緻密な手術ができることです。
また、肝臓に転移のある大腸がんに対しても、積極的に切除を行っており、生存率の向上を努めています。肝臓や腹膜に転移のある切除不能大腸がんに対する抗がん剤治療も胃がんと同様に消化器外科医が行っているため、手術療法との連携がスムーズに行えます。

腹腔鏡下大腸切除

腹腔鏡下大腸切除の手術創

腹腔鏡手術風景

【食道疾患】食道がん
食道がんは大きく扁平上皮がんと腺がんに分けられ、高齢者男性を中心に増加傾向のがんです。食道の扁平上皮がんは喫煙や飲酒が発生のリスク因子として知られ、リンパ節転移や近くの臓器に浸潤しやすく、難治がんのひとつです。食道がんに対する標準的な治療法は術前化学療法+手術ですが、手術は胸部から腹部に及ぶため高齢で臓器機能の低下した患者さんに対しては手術を行うことが難しい場合があります。そのような患者さんに対しては化学放射線療法(放射線照射と抗がん剤治療の併用)を行っており、良好な結果が得られています。
【一般外科疾患】胆石症、胆嚢ポリープ、ヘルニア、痔核、痔瘻、急性虫垂炎、消化管穿孔
これらの良性疾患に対する手術も行っています。大学病院である強みを生かして、血液透析や抗凝固療法中の方などリスクの高い症例に対しても、他科と連携して手術に臨むことができます。また、胆石症、ヘルニア、急性虫垂炎に対しては腹腔鏡下手術を標準としており、創の大きさを最小に治療しています。

腹腔鏡下虫垂切除