大学病院の案内

日本大学医学部附属板橋病院 救命救急センター

板橋病院

はじめに

日本大学医学部附属板橋病院は、人口180万人を擁する二次医療圏に位置する特定機能病院で、当院救命救急センターは、最重症の3次救急の患者のみを扱う専門の施設です。年間2000例以上の患者を受け入れており都内でも最も多くの患者を扱う救命救急センターのひとつです。

「災害拠点病院」であるとともに、従来から参画している「東京都CCUネットワーク」に加えて2009年には「東京都脳卒中急性期医療機関」、災害派遣医療チームである「東京DMAT指定医療機関」、および東京都母体救命搬送システムの「母体救命対応総合周産期母子医療センター」(都内3医療機関)に、2010年には東京都こども救命搬送システムの「こども救命センター」(都内4医療機関)加えて、2011年には急性大動脈スーパーネットワークの「緊急大動脈重点病院」や「日本DMAT指定医療機関」に指定され、2012年からは東京都熱傷救急連絡協議会(http://www.tbua.jp/)やメンバーとして活動しています。

東京都内で以上全ての指定を受けているのは当救命救急センターのみであり、社会的に重要な使命を果たすために関係診療科と緊密な連携を図りながら幅広い分野の救急医療に柔軟に横断的に対応すべく日々努力を続けています。

外科系疾患

多発外傷をはじめとした外傷外科、腹部救急疾患、重症急性膵炎、血管疾患、重症感染症、重症熱傷の治療を主体に救急医療,集中治療を行っています。手術症例は年間220例であり年々増加傾向にあります。また、血管内マイクロカテーテルを駆使した経カテーテル動脈塞栓術、持続動脈注入療法等の血管内手術や治療が得意であり、各種の出血や血管病変、重症急性膵炎等を対象に積極的に行っています。

内科系疾患

対象疾患は、内因性疾患(呼吸器,消化器,循環器など)、急性中毒など、多岐にわたります。特にチーム医療(医師・看護士・薬剤師・臨床工学技師など)による呼吸管理を円滑に行い、人工呼吸器のあらゆるモードを駆使して重症呼吸不全(急性呼吸窮迫症候群、気管支喘息重積発作など)の治療に当っています。患者さんにより負担がかからないようにできるだけ侵襲の少ない治療法の開発を目指しています。さらに、内因性疾患による重症内科系疾病(敗血症・多臓器不全など)を血液浄化法、体外循環など集中治療医学を駆使し、精力的に治療展開しています。

神経系疾患

東京消防庁三次対応ホットラインや他院にて処置困難な意識障害を主訴とする依頼に対応。頭部外傷、脳血管障害、脊髄損傷、痙攣重積、代謝性脳症など、年間 400 例におよぶ集中治療を行っています。重症の中枢神経系疾患の治療を行なう上で、頭蓋内環境の早期把握はもちろんのこと、脳は全身の一部との認識から、全身状態の把握と二次的に発生する各種臓器障害の改善にまで治療の焦点をあてています。それには、全身の呼吸・循環管理が必要となってくることから、各専門家による多彩なメンバーにより治療にあたっています。

重症頭部外傷においては手術が必要であれば開頭血腫除去術来院後直ちに開始しています。また、頭部外傷に他の外傷を合併することもあり、各科の専門医が一体となって外傷に取り組んでいます。

当救命救急センターでは脳血管集中治療センターを併設し脳血管疾患特に閉塞性脳血管障害にも緊急での対応できる体制を作っています。脳卒中が疑われた時には、発症早期なら、ただちに脳血管撮影を行い、血管閉塞部位が明らかであった場合、血栓溶解療法や経皮的脳血管拡張術などのカテーテルを用いた脳血管内手術を行なっています。その中で片麻痺の症状改善が認められる例を数多く経験しています。当救命救急センターではいつ発生するかわからないブレイン・アタックに対し 24 時間いつでも対応可能な体制を整えています。

当救命救急センターでは、全身管理を含めた集中治療の必要な重症クモ膜下出血でも積極的治療を行っています。重症くも膜下出血患者にしばしば合併する呼吸不全や不整脈及び心筋障害による循環管理が非常に重要です。そのような場合でも、各臓器別の専門医が専従しており、医師全員が一丸となって治療にあたっています。

いつ発生するかわからず、従来の縦割り診療科では対応しきれない状況にある治療困難な重症中枢神経疾患に対し、24 時間いつでも対応可能な体制で治療にあたっています。

心肺停止蘇生後

救急・集中治療領域のなかでも蘇生学:reanimatologyは重要な学問体系の一つです。特に心肺停止状態に陥った患者を如何に社会復帰まで導くかは、蘇生学の発達なくしては実現できません。もちろん心肺停止状態の患者に遭遇した市民の方々、病院前救護体制、病院到着後の二次救急処置すべてが命の鎖:chain of survivalとしてしっかりと手をつなぐことが、社会復帰率を向上させるためには大切です。しかし、本邦での全心肺停止蘇生後患者の社会復帰率は1%前後と低値です。我々の救命救急センターには年間約500例の心肺停止患者が搬送されますが、社会復帰率は約4%と全国平均の3-4倍の成績です。これには先にも述べたように救急・集中治療学をバックグラウンドとした蘇生学の進歩が新たな治療の可能性をもたらしてくれているのです。

心原性心肺停止蘇生後患者に対する脳低温療法

脳低温療法の適応は、目撃者のある心原性院外心肺停止患者、窒息や溺水の患者で、最初の心電図所見が心室細動もしくは無脈性心室頻拍で、心肺蘇生術が5-15分以内に医療従事者等によりなされた症例などが適応条件としている施設が多いです。

近年報告されている心原性院外心肺停止蘇生後患者に行う脳低温療法後の転帰は、前述の条件がそろった患者での神経学的転帰良好群が49-55%で、脳低温療法非施行群26-39%に比較して有意に転帰が改善されています。当施設からの報告では、心原性院外心肺停止蘇生後患者に、人工心肺と血管内治療を併用し脳低温療法を行う事で52%が転帰良好でした。脳低温療法は、2-4時間以内に目標温度に到達させることが強調されています。救急医学教室では、少しでも多くの患者さんを救命するために、日夜臨床に基礎研究に打ち込んでいます。

心疾患(冠動脈疾患)(循環器内科)

わが国における3大死亡原因でもある心疾患は近年急増しており,その緊急性が重要視されております。CCUは,Coronary Care Unitの略語であり,急性心筋梗塞をはじめとする冠動脈疾患の救急専門治療部門であります。治療対象となる病気は,急性心筋梗塞・不安定狭心症・解離性大動脈瘤・急性心不全などであります。

救命センターに属するCCUは都内でも,日本大学だけの特徴となっており,心臓救急医療ばかりでなく,外傷・脳疾患・呼吸器疾患・消化器病・肝臓病のエキスパートが常駐するため,各専門家による全身管理が可能な点があります。心臓部門についての特徴についてご説明いたします。

当CCUの特徴

当CCUは東京都CCUネットワークに所属しており,24時間体制で東京都の心筋梗塞・狭心症患者の受け入れを行い,年間約350名の患者さんを受け入れており,地域の医院・病院から依頼にも,可能な限り受け入れております。また,入室された患者さんに対しては,24時間体制で緊急心臓カテーテル検査,冠動脈形成術(PTCA)を施行しております。PTCAは動脈硬化や血栓により細くなった冠動脈を風船付きカテーテルによる拡張(PTCA),ステンレスなどからできている管を留置・拡張して再び冠動脈が細くなることを防ぐ(ステント)治療を行っています。これらの治療法選択には,有用な情報をもたらす血管内エコー検査や血管内視鏡検査を行って,治療成績を上げています。また,心臓血管外科との緊密な連絡がとられており,緊急心臓手術が受けられる体制にも万全を期しております。

心室細動などの致死的不整脈により,搬送された患者さんのうち,急性心筋梗塞に基づく不整脈も多く含まれております。救命処置を施行しながら,電気的除細動・PCPS・IABPと呼ばれる補助循環装置を駆使し,緊急心臓カテーテルによる冠動脈治療を行い,冠血行再建を行うばかりでなく,意識が無い状態で運ばれてきた患者さんに対しては,引き続き脳低温療法を行うことで,従来の治療では,生命は救われたが意識がはっきりしない患者さんが,多く社会復帰できるまでに回復している実績もあります。

近年注目されている,再生医療におきましても,循環器科・心臓血管外科・先端医学リサーチセンターの専門家とともに臨床応用に向け研究を重ねております。

主に急性期治療を担当するCCUでありますが,数日の入室の後には,当院循環器科に治療を引継ぎ,心臓リハビリテーション・冠疾患危険因子(糖尿病・高血圧・高尿酸血症・生活習慣)の精査と治療を引き続き担当いたします。また,回復期には心筋シンチグラム検査を行い,心筋の残存状況などを把握して追加治療を適宜行います。さらに,総合的な心疾患治療に関して,以下にご紹介いたします。

〈不整脈〉

内服薬が有効でない発作的に脈が速くなる頻脈性不整脈では,カテーテルを用いて心臓の一部を電気的に焼灼して再び不整脈を起こさせないように治療を行っています。致死的な不整脈である心室頻拍・心室細動に対しては植え込み型除細動器(ICD)の植え込みを行っています。脈が遅くなる徐脈性不整脈には適応があればペースメーカーの植え込みも行っています。

〈突然死の予知〉

不整脈による突然死を未然に防ぐため,予知検査として体表面から心臓微小電位(レートポテンシャル)の記録およびT波オルタナス(TWA)の検査を行っています。

〈心臓弁膜症や心筋症など〉

診断に最新の超音波装置を使用して弁膜症に高い精度の診断を行い,治療方針の決定を行っています。

〈閉塞性動脈硬化症に対する自家骨髄細胞移植療法〉

閉塞性動脈硬化症は,動脈硬化によって足の血管が細くなり血流が悪くなるため,歩くと足が痛くなったり,さらに血流が悪くなると筋肉が腐ってしまう病気です。治療法としては,薬や手術の適応でない患者さんも増加してきました。最近,血流が悪いため痛みを感じる部分に自分の骨髄細胞を筋肉注射することにより,その部分に新しい血管が作られ血流が良くなることがわかり,私たちも研究をかさねて来て良い結果が得られました。この自家骨髄細胞移植術は,健康保険の適応を受けた治療法ではないため,一般の治療方法では効果がなかった患者さんに対しての治療法です。当院血管外科を中心に循環器科,高度先進リサーチセンターが互いに協力し自家骨髄細胞移植術を行っております。

日本大学医学部附属板橋病院 こども救命センターの実績

当院は、2010年9月より東京都こども救命センター運営事業(都内4カ所が指定)に参画しています。小児科を始めとする関係各科と連携し、重篤小児の診療体制を整備しています。

2010年9月のこども救命センター運営事業参画以降(2010年9月から2013年12月)、当センターに搬入された15歳以下の小児症例は、320例(男女比 185:135・年齢中央値3:日齢4〜15歳)、事業開始前の2009年と比べ搬入は3.5倍に増加しています。内因系疾患221例、外因系疾患78例、来院時心肺停止は21例。そのうち直送219例、転送61例でした。

高度な侵襲的処置・治療としては、人工呼吸管理85例、中心静脈路確保30例、血液浄化療法2例、ECMO4例を経験しています。緊急手術は6例ありました。

予測死亡率9.6%(PIM2より算出)に対して、実死亡率7.5 %(27例)でした。死亡例中、来院時心肺停止(CPAOA)が21例と、その大部分を占めています。

生存293例中、神経学的転帰を示すPediatric cerebral performance category scale(PCPC)低下は7例でした。

こども救命センターの今後

こども救命センターの開設により、当院では重篤小児患者の搬入数が増加しています。小児の重症症例を扱う施設が少ない中、重篤小児患者を集約した救急・集中医療体制を構築することで、良好な診療成績が得られるようになってきました。

今後、さらなる診療レベル向上を目指し、院内関係各科との連携強化、体外循環などを含む高度医療の実践、周辺地域の医療機関や、他のこども救命センター運営事業参画施設などとの連携強化を図っていきたいと考えております。

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