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糖尿病研究について

当教室での糖尿病研究について

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膵ランゲルハンス島(赤:グルカゴンを分泌するα細胞。緑:インスリンを分泌するβ細胞)

糖尿病を中心とした代謝疾患に関して、これまで当教室で進められてきた研究に加え、新任の石原教授のもと新たなテーマへの取り組みを開始いたしました。


具体的な研究内容

1. 肝糖代謝調節機構膵
  肝臓における門脈シグナルによる代謝調節機構の解明

肝臓は、門脈から到達したグルコースを効率的に取込みますが、肝動脈のグルコースは、ほとんど取込まないということが知られています。この現象は門脈から何らかのシグナルが送られるためと考えており、肝臓におけるグリコーゲン、グリコフォスフォリラーゼおよびグルコキナーゼの動態からこの仮説を証明しつつあります。

2. 2型糖尿病における炎症と心血管疾患の発症機構の解明

2型糖尿病の大血管症の合併に血管内の炎症が関与していることは、明らかになりつつありますが、炎症マーカーの高感度CRP をさらに高感度化した超高感度CRPを心血管疾患のない2型糖尿病患者で測定し、心血管イベントの予測マーカーとしての有用性を検討しています。さらに、血管内皮機能の測定とこれらマーカーから治療薬の有効性を検討します。

3. 膵β細胞脱落における小胞体ストレス・アポトーシスの役割の解明

2型糖尿病においてもβ細胞の脱落が進行していることが、近年明らかになってきました。そのメカニズムに小胞体ストレスという細胞にとっての負荷が重要な役割を果たしていることがわかっています。小胞体ストレスとは、細胞内の小胞体という器官で、折りたたみ異常をおこしたタンパクができることです。 このストレスは多かれ少なかれどの細胞にも存在しますが、β細胞のように分泌タンパク(β細胞の場合は、インスリン)を多量に産生する細胞では、このストレスが元々大きいと考えられています。このようβ細胞が過食などでさらにインスリンを多量に作らなければならない状況に追いやられると、β細胞は破綻を来して細胞死(アポトーシス)に陥ります。その分子基盤を明らかにすることにより、β細胞の脱落を防ぐという切り口からの新たな糖尿病治療薬開発を目指していきたいと考えています。

4. インスリン・グルカゴン分泌機構

膵島は、刻々と変わる血液中のグルコース濃度を感知して、それに見合ったインスリンとグルカゴンを分泌することによって、生体のグルコースホメオスターシスの維持に中心的役割をはたしています。私たちは、グルカゴン分泌α細胞やインスリン分泌β細胞細胞に対する細胞工学的アプローチを用いた研究から、この機構の解明に貢献してきました。今後もさらに、インスリン・グルカゴン分泌機構の解明を進め、新たな治療薬の創薬に結びつけたいと考えています。

5. 膵β細胞細胞に対する遺伝子治療・細胞治療をめざした基礎研究

糖尿病の病態の一つの柱が、膵β細胞の脱落であることから、インスリン分泌細胞を供給することにより、糖尿病の根本的治療が達成される可能性が考えられます。そこで、膵β細胞に対する遺伝子導入法の開発や遺伝子改変を行ったインスリン分泌細胞の作製を行い、実際の糖尿病治療に役立てられるようにモデル動物を用いた検討を行っています。