日大医学雑誌
PACS がもたらすものと導入の留意点
総説
著者
阿部 克己 高橋元一郎 奥畑 好孝 竹本 明子
藤井 元彰 齊藤 勉 前林 俊也 斎藤 友也
田中 生恵 奈良田光宏 雫石 崇 坂口 雅州
佐々木康夫*
日本大学医学部放射線医学系
*岩手県立中央病院放射線科
はじめに
世界的な IT 化の流れをふまえ,政府は 2001 年 1 月に e-Japan 戦略によりインターネットインフラの整備を行った.2003 年 7 月の e-Japan 戦略 II では医療を含めた 7 分野での IT の利活用の促進を計画し,2006 年度末までに全国の 400 床以上の病院の電子カルテシステム普及率を 6 割以上とすることを目標とした.しかし,電子カルテは高価な導入費用や標準化されていない仕様などが弊害となり,現在の普及率は1割程度にとどまっている.さらに平成 19 年 3 月厚生労働省発表の医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン (http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h0327-3.html) では,レセプトオンライン化の完全実施,画像を含めた診療情報提供書のフォーマットの標準化による流通,セキュリティ強化のための公開鍵基盤の構築と運用,保険証のコードの装着,IC カードの導入など具体的内容が示されており,今後の医療の IT 化は普及の速度に疑問は残るものの,進展していくことは確実である.この中で PACS (PictureArchiving and Communication System: 医用画像の電子化による保管閲覧システム) 導入は 1984 年には 91 施設であったが,2004 年には 2342 施設と着実に普及し1),その利便性から電子カルテの有力な補助システムあるいは単独のシステムとして今後更なる普及が予測される.一方,平成 18 年度診療報酬改定では,コンピュータ画像処理加算が新設されフィルム費用を算定しない場合に 60 点が加算されることになった.フィルム使用に関しては,単純撮影に於て 2 枚目以上のフィルム料が減額され,これらは PACS によるフィルムレスを推進する政府の方針の一環と考えられる.本稿では PACS が何をもたらすのか,そしてその導入に於て留意すべき点について述べる.
keyword
PACS, filmless, Digital Imaging, Image Diagnosis
PACS,フィルムレス,デジタル画像,画像診断