日大医学雑誌

咽頭の視診所見からインフルエンザを診断する

原著

著者

宮  本  昭  彦
医療法人昭徳会 内科宮本医院

要旨

インフルエンザでは,臨床的 (特徴的) 所見は殆どないと考えられてきた.2003 年 12 月から 2004 年 2月に,急激に発症した頭痛・発熱・悪寒・筋肉および随伴する呼吸器症状等で当院を受診した 169 名の患者の臨床的徴候と迅速ウィルス診断テストを用いた臨床検査所見について考察した.169 名の内 53 名は迅速検査で A型インフルエンザと診断された.A 型インフルエンザと診断された 53 名全員の咽頭粘膜に直径 2~4 mm の淡紅色を帯びた半球状の小濾胞が見られた.この特徴的小濾胞は,53 名の全例で初診日に認められた.この小型の濾胞は A 型インフルエンザ発症のごく初期に現れる.濾胞は,3 例において,ウィルス迅速検査が陽性化するより早く出現した.迅速ウィルス検査は簡便であるが,検査に要する経費を侮る事はできない.A 型インフルエンザの患者の咽頭粘膜に小濾胞を見出す事は十分な意義を持ち,臨床検査にかかわる医療費を削減できる可能性も示唆している.

keyword

influenza, common cold, inspection, physical findings, rapid viral tests
インフルエンザ,かぜ症候群,視診,臨床所見,ウィルス迅速検査