心臓再同期療法 (Cardiac resynchronization therapy: CRT) における心エコーの役割
―Dyssynchrony 評価の重要性―
画像診断
著者
笠巻 祐二 太田 昌克 東海康太郎 中井 俊子
木村 玄1) 瀬在 明1) 佐藤 裕一 渡邉 一郎
斎藤 穎2) 南 和友1) 平山 篤志
日本大学医学部内科学系循環器内科学分野
1)日本大学医学部外科学系心臓血管外科学分野
2)日本大学医学部先端医学系探索医療・ゲノム疫学分野
はじめに
近年,難治性心不全に対する非薬物治療として両心室ぺーシングによる心臓再同期療法 (CRT) が注目されている.本邦でも一昨年に保険償還されてから CRT 施行例が増加し,その臨床的有用性についてのエビデンスも集積されつつある.CRT の出現により,明らかに QOL が改善する重症心不全例が増加した一方で,残念ながら治療効果が得られない例も少なからず存在する.すなわち,CRT には70%の responder (治療効果あり) と 30%の non-responder(治療効果なし) が存在する.現在,CRT の治療効果を左右する最も重要な因子は,術前における心臓とくに左室の同期不全 (dyssynchrony) と考えられている.したがって,CRT 施行前に dyssynchrony を如何に正確に評価できるかが responder と non-responder を術前に識別し得る鍵となる.その評価は現在心エコーのさまざまな手法によりなされているが,いまだ標準化されていない.その理由は,心臓の dyssynchrony が予想以上に複雑な現象であり,それを評価する方法も一様ではなく,かつ解釈も容易ではないためと考えられる.本稿では,心エコーによる dyssynchrony評価の現状と問題点について概説し,我々の症例を踏まえて将来展望について述べることにする.