日大医学雑誌

左側進行大腸癌におけるリンパ節郭清度に関する検討

原著

著者

大亀 浩久  増田 英樹  林  成興  高山 忠利
日本大学医学部外科学講座消化器外科部門

要旨

本邦の大腸癌治療ガイドライン (以下,ガイドライン) では,リンパ節転移陽性を疑う場合や奬膜を越える進行大腸癌に対しては領域リンパ節郭清 (以下,D3郭清) を原則としている.しかしながら,左側進行大腸癌におけるリンパ節郭清度と予後については明確な回答が得られていない.そこで,1985 年から 1998 年までに当教室において切除された左側 (下行結腸,S 状結腸,S 状直腸部) 大腸癌のうち,早期大腸癌を除いた根治度A でかつ,中間リンパ節までの郭清 (以下,D2 郭清) および D3 郭清を施行した 354 例を対象に予後を中心に検討した.354 例のうち,D2 群は 228 例 (64%),D3 群は126 例 (36%) であった.累積 5 年生存率 (以下,5 生率)は D2 群 (84.2%),D3 群 (86.5%) と有意な差は得られなかった (p = 0.6131).また,壁深達度が SE や SI の浸潤症例 (105 例) における 5 生率においても,D2 群 (62 例)が 75.8%,D3 群が 79.1% (43 例) と有意差は認められなかった (p = 0.7593).さらに,組織学的リンパ節転移陽性例 (152 例) において,D2 群 (88 例) と D3 群 (64 例) との 5 生率の間に有意差は認められなかった (76.1% vs81.3%) (p = 0.4868).以上より,予後に関して,左側進行大腸癌では,壁深達度やリンパ節転移陽性にかかわらず,D2 郭清を行うことで D3 郭清に匹敵する効果があると考えられた.

keyword

left-side advanced colon cancer, lymph node dissection, prognosis
左側進行大腸癌,リンパ節郭清度,予後