日大医学雑誌

C 型慢性肝疾患における糖代謝異常とその臨床的意義

原著

著者

老  沼  悟  朗
日本大学医学部内科学講座消化器肝臓内科部門

要旨

近年,C 型慢性肝炎に糖尿病や肥満が合併すると肝臓癌の発症率が高まり,また死亡率が増加することが明らかにされ,C 型慢性肝疾患に対して発癌抑止の観点から介入的栄養治療の必要性が指摘されている.そこで,C 型慢性肝疾患患者を対象に 75 g 経口糖負荷試験を施行し,C 型慢性肝疾患患者の糖代謝状態とその臨床的意義を明らかにすることを目的とした.対象 139 例(慢性肝炎 92 例,肝硬変 47 例) での分析の結果,慢性肝炎では 45.7%,肝硬変では 76.6%で耐糖能障害が合併していた.HOMA-IR によるインスリン抵抗性は,慢性肝炎で 20.5%,肝硬変では 47.7%で亢進がみられた.75g 経口糖負荷試験では,耐糖能障害がみられた症例の27.3%,インスリン抵抗性が合併した症例の 66.7%で血糖日内変動の最高血糖値が 200 mg/dl 以上であった.したがって,C 型慢性肝疾患患者に対しては積極的に 75 g経口糖負荷試験を行い,境界型,糖尿病型の耐糖能障害を呈する症例に対して栄養治療を行うべきであると考えられた.

keyword

glucose intolerance, iron, hepatitis C virus, chronic liver disease
耐糖能障害,鉄,C 型肝炎ウイルス,慢性肝疾患