日大医学雑誌

非小細胞肺癌症例における血管新生調節因子の関与について

原著

著者

小室 万里  村松  高  四万村三恵  古市 基彦
大森 一光
日本大学医学部外科学講座呼吸器外科部門

要旨

非小細胞肺癌症例において,強い血管新生誘導因子である VEGF と内因性血管新生抑制因子である endostatinの血中濃度を術前に測定し検討した.対象は当科にて手術を施行した原発性肺癌症例の非小細胞肺癌 211例で VEGF および endostatin はコントロール群 (健康成人) より有意に高値をしめした.また VEGF では T 因子別と病理組織別に有意差を,endostatin では病理組織別と予後別 (無再発と再発・死亡) に有意差を認めた.しかし VEGF と endostatin の相関関係は認めなかった.以上より肺癌症例の術前血中 VEGF, endostatin は健常者に比べ有意に高く,血管新生誘導と内因性血管新生抑制が亢進していることが示唆された.また VEGF は腫瘍の大きさに,endostatin は予後に関与すると推測された.

keyword

Non-small cell lung cancer, Endostatin, VEGF
非小細胞肺癌,エンドスタチン,VEGF