日大医学雑誌

肺血栓塞栓症

画像診断

著者

折目由紀彦  木村 俊一  柏崎  暁  高森 達也
山田 賢稿  長尾  建*  菊島 公夫*  渡辺 和宏*
立花 栄三*  向山 剛生*  富永 善照*
駿河台日本大学病院心臓血管外科,*救急救命センター

はじめに

肺動脈内の血栓が形成され肺動脈を閉塞する肺血栓症と,静脈系から血栓または脂肪などが肺動脈に流入して肺動脈を閉塞する肺塞栓症とは臨床的には全く同じ病態を示すため,これら両者を含めて肺血栓塞栓症 (pulmonarythromboembolism: PTE) と呼んでいる.
 本症は欧米では発生頻度の高い疾患であり,脳梗塞,心筋梗塞と並んで 3 大血栓性疾患の一つである.米国では毎年約 60 万人が罹患し,その約 1 割が急性期に死亡している1).本邦での発生数はアメリカの 1/25 であるが,高齢者人口の増加,生活様式の欧米化,診断能の向上などにより,有病率は増加傾向にある.本症が発症した場合の死亡率は約 14%で,死亡例の 40%以上が発症 1時間以内の突然死例であり2),本症の早期診断,治療体系の確立が急務である.