日大医学雑誌

褥瘡の重症化率による褥瘡ケアの質評価に関する研究

原著

著者

三宅  哲1, 6)  梅里 良正1)  前田 幸宏1)  大道  久1)
佐々木健司2)  勝木 良雄3)  佐藤 正子3)  有賀  徹4)
中村 清吾5)
1)日本大学医学部社会医学講座医療管理学部門
2)日本大学医学部形成外科学部門
3)日鋼記念病院診療情報管理部
4)昭和大学医学部救急医学教室
5)聖路加国際病院外科
6)横須賀市立市民病院歯科口腔外科

要旨

本研究は褥瘡の重症化率を評価指標として,褥瘡ケアの質向上を図ることを目的とする.リスク調整後の重症褥瘡の発生率について,他施設や他病棟とベンチマーキングを行い,自らのケアの水準を知ることは,褥瘡重症化予防へのインセンティブが働き,褥瘡ケアの質の向上に寄与するものと考えられる.
 協力病院 4 施設において 2002 年 8 月から 2005 年 2 月までに褥瘡が発生した患者 608 例について,褥瘡の発生リスクおよび褥瘡発生状況に関するデータを調査し,ロジスティック回帰分析を用いて,発生した褥瘡の重症化の確率を予測するモデル式を作成した.本モデル式により,褥瘡の重症化のリスクを調整した上での重症褥瘡の発生率を推計し,各施設における重症褥瘡の実際の発生状況の評価を行った.本研究で作成された推計式は,症例による褥瘡重症化のリスクを調整した上での褥瘡の重症化率を推計するものであり,ケアの質評価手法として有効と考えられた.

keyword

pressure ulcer, severe pressure ulcer ratio, logistic regression analysis, evaluation of quality of care
褥瘡,褥瘡重症化率,ロジスティック回帰分析,ケアの質評価