日大医学雑誌

SSPE 麻疹ウイルスによる細胞融合能機能解析

原著

著者

東郷 将希  駒瀬 勝啓*  水谷 智彦  中山 哲夫*
日本大学医学部内科学講座神経内科部門
*北里生命科学研究所感染制御学府ウイルス I 学教室

要旨

今回我々は SSPE 麻疹ウイルスである SSPE75株 (genotype C1) と ZH 株 (genotype F) の fusion (F) 蛋白と hemagglutinin (H) 蛋白を用いて細胞融合誘導能を調べた.対照ウイルスとして AIK-C ワクチン株を使用した.ZH 株の H 蛋白は AIK-C 株の F 蛋白と共発現することで,Vero 細胞と B95a 細胞の両方に 細胞融合を形成したが,SSPE75 株の H 蛋白では,481 番目のアミノ酸が Asn であり,B95a 細胞には細胞融合を形成したが,Vero 細胞には細胞融合を認めなかった.しかし,SSPE75 株の F 蛋白を用いると SSPE75 株の H 蛋白はVero 細胞にも細胞融合を形成した.SSPE75 株の F 蛋白は AIK-C 株の H 蛋白に対しても著 明な細胞融合能を示し,高い細胞融合誘導能 を持つことが明らかとなった.SSPE75 株 F 蛋白は 16 個のアミノ酸の deletion が確認され,ZH 株では終止コドンの mutation により 29 個のアミノ酸の elongation を認めた.これらの変異の中で高い細胞融合誘導能に関連する重 要な部位を特定する必要がある.

keyword

measles virus, subacute sclerosing panencephalitis (SSPE), cell fusion, fusion protein, hemagglutinin
protein
麻疹ウイルス,亜急性硬化性全 脳炎 (SSPE), 細胞融合,F 蛋白, H 蛋白