日大医学雑誌

糞石嵌頓にて発症した横行結腸憩室症の 1 例

症例報告

著者

中野 直樹  三松 謙司1)  川崎 篤史1)  荒牧  修1)
久保井洋一1)  桂  義久2)  大井田尚継1)  天野 定雄3)
社会保険横浜中央病院臨床研修医
1)社会保険横浜中央病院外科
2)社会保険横浜中央病院病理
3)日本大学医学部外科学講座乳腺内分泌外科部門

要旨

症例は 40 歳,女性.18 歳時に急性虫垂炎にて虫垂切除術の既往有り.平成 18 年 7 月,右下腹部痛を主訴に救急外来受診した.腹部所見では,虫垂炎手術痕に一致した部位に強い圧痛を認めた.腹部 CT 検査では,右側腹部に石灰化を伴う腫瘤像を認め,結腸憩室炎の診断にて緊急手術を施行した.術中所見では虫垂切除術後創部に横行結腸が癒着し,その部位の漿膜の炎症が著明であり,腫瘤を形成していた.手術は,横行結腸憩室炎の診断にて横行結腸部分切除術を施行した.切除標本では,憩室が認められ,その憩室内に糞石が嵌頓していた.病理組織検査にて線維化を伴った憩室炎と診断された.急性虫垂炎術後の右側腹部痛をきたす炎症性疾患として結腸憩室炎は最も考慮に入れなければならない疾患であるが,本症例のように術後創に横行結腸が癒着し,結石嵌頓で発症した憩室症は稀であり,既往手術のある症例については精査を必要とすると考えられた.

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diverticulitis, impaction of a fecal stone
憩室炎,糞石嵌頓