日大医学雑誌

ヒト成熟脂肪細胞を用いた骨組織再生の検討

原著

著者

田中 伸明  松本 太郎1)  高畠  聖2)  加野浩一郎2)
龍 順之助  麦島 秀雄1)
日本大学医学部整形外科学講座 
1)日本大学医学部大学院医学研究科細胞再生移植医学 
2)日本大学生物資源科学部動物生体機構学

要旨

骨再生医療における細胞源として骨髄間葉系幹細胞が注目されているが,未だ一般的な治療法とはなり得ていない.我々は成熟脂肪細胞を体外で脱分化させることによって高い増殖能と多分化能を有する脱分化脂肪細胞 (dedifferentiated fat cells, DFATs) を調製する培養法を確立した.今回ヒト成熟脂肪組織由来 DFATs を用いた骨組織再生の可能性を検討した.ヒト DFATs を骨分化誘導培地にて培養した結果,培養 1 週間後よりアルカリフォスファターゼ陽性骨芽細胞が出現し,3 週間後にはアリザリンレッド S 陽性の骨石灰化像が認められた.ヒト DFATs を人工骨基質上に播種し,骨誘導培地にて2 週間培養後,ヌードマウスの皮下に移植すると,移植3 週間後には成熟度の高い骨組織が形成された.DFATsは少量の脂肪組織から簡便に大量調製が可能であることから,骨再生療法の新たな細胞源として期待できる.

keyword

mature adipocyte, de differentiated fat cell, osteoblast, bone regeneration
成熟脂肪細胞,脱分化脂肪細胞,骨芽細胞,骨再生