日大医学雑誌

妊娠高血圧腎症における VEGF, PlGF, sVEGFR1 に関する検討
(妊娠高血圧腎症血清の各因子産生への影響を含めて)

原著

著者

中澤 禎子  山本 樹生  久野宗一郎  村瀬 隆之
日本大学医学部産婦人科学講座

要旨

妊娠高血圧腎症 (PE) における VEGF, PlGF,sVEGFR1 の意義を検討するため,PE 患者末梢血中の各因子の濃度を測定したのち,絨毛癌細胞培養系を用いてPE 患者血清の各因子産生に対する影響を検討した.
[方法] PE 患者末梢血中の各因子を ELISA 法にて測定した.絨毛癌細胞株を培養し,各血清を 10%の濃度で添加し,24 時間後の培養上清を採取,各因子濃度を ELISA法にて,絨毛癌細胞の生存率を XTT 法にて測定した.正常妊娠,PE 患者より血清を採取し滅菌後使用した.
[成績] PE 患者末梢血中では free VEGF と PlGF は低下したが sVEGFR1 は増加していた.培養上清中の freeVEGF は正常妊娠血清添加に比し PE 患者血清添加で有意な低値を認めた.PlGF 濃度は有意な差を認めなかった.しかし,sVEGFR1 の増加濃度は正常妊娠血清添加に比較し PE 血清添加で有意に高値を示した.絨毛癌細胞の生存率は正常妊娠血清添加と PE 血清添加で有意な差を認めなかった.
[結論] PE 患者の末梢血中ではVEGF, PlGF が低下,sVEGFR1 が増加している.PE 患者血清は絨毛細胞による VEGF の産生を低下させ,sVEGFR1 産生を増加することにより VEGF,PlGF の作用を発現しにくくし,PE の高血圧発症に関与し,胎盤形成には抑制的作用をもつことが判明した.

keyword

preeclampsia, VEGF, PlGF, sVEGFR1, choriocarcinoma cell
妊娠高血圧腎症,血管内皮増殖因子,胎盤増殖因子,可溶性血管内皮増殖因子受容体,絨毛癌
細胞