日大医学雑誌

脱分化脂肪細胞から平滑筋細胞への分化誘導と膀胱平滑筋再生への応用

原著

著者

咲間 隆裕1, 2)  松本 太郎2)  加野浩一郎3)  高橋  悟1)
麦島 秀雄2)
1)日本大学医学部泌尿器科学講座
2)日本大学大学院先端医学講座細胞再生・移植医学部門
3)日本大学生物資源科学部動物資源科学科動物生体機構学研究室

要旨

 我々は成熟脂肪細胞より多分化能を有する脱分化脂肪細胞 (DFATs) を単離樹立した.本研究ではこのDFATs から膀胱平滑筋再生の可能性を探るため,まず平滑筋細胞への至適分化誘導条件を検討した.その結果 DFATs は,5%胎児ウシ血清存在下および 5 ng/mlTGFb1 刺激により,平滑筋 a アクチン陽性細胞率 51%と最も効率的に平滑筋細胞に分化誘導できた.その過程において,平滑筋マーカー mRNA の発現は増加し,脂肪細胞マーカーの発現は減少することをリアルタイムRT-PCR (reversetranscription-polymerrase chain reaction:以下 RT-PCR) 法を用いて証明した.次に C57BL/6 マウスの膀胱壁に凍結傷害を作成し,GFP トランスジェニックマウス由来 DFATs を注入し,膀胱平滑筋への分化能を評価した.移植 14 日後,DFATs を移植した傷害組織は,平滑筋細胞の増生が認められ,その一部は GFP 陽性となった.以上より DFATs が膀胱平滑筋に分化し,組織再生を促進することが示唆された.

keyword

bladder regeneration, DFATs, smooth muscle cell
膀胱再生,脱分化脂肪細胞,平滑筋細胞