原著

著者

及川　　治　　樋口　輝美　　山崎　俊男　　山元　智衣
福田　　昇　　松本　紘一
日本大学医学部内科学講座腎臓内分泌内科部門

要旨

［目的］ 血液透析患者における動脈硬化関連合併症が注目され，動脈硬化症の進展において，血管石灰化抑制因子である fetuin-A が着目されている．そこで今回我々は fetuin-A と種々のパラメーターについて検討する．［対象，方法］ 血液透析患者 40 名 (男性 22 名，女性18 名，年齢 57 ± 12 歳) と健常者 20 名 (男性 10 名，女性10 名，年齢 50 ± 10 歳) を対象とし，血清 fetuin-A 濃度を ELISA 法にて測定し，cardio ankle vascular index(CAVI)， 年齢，平均血圧，BMI， 透析期間，Kt/V， 糖尿病の有無，喫煙状況，心電図変化の有無，Hb, Hct,ALP, Ca, P, Ca ´ P, intact-PTH, T-Cho, TG, Lp(a),albumin， ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP) 及び高感度 CRP などの各種パラメーターとの相関を検討した．［結果］ fetuin-A は，健常者群 (361 ± 55 μg/ml ) に比し血液透析患者群 (331 ± 55 μg/ml ) で有意な低値 (p <0.05) を認めた．また血液透析患者群では透析期間 (r = -0.37, p < 0.01)， BNP (r = - 0.48, p < 0.001)， 高感度 CRP(r = - 0.40, p < 0.01) と負の相関を示し，血清 albumin (r = 0.31, p < 0.05) と正の相関を示した．［結論］ 血液透析患者における低 fetuin-A は低栄養，炎症，アテローム性動脈硬化に加えて，心不全予測の有用な指標に関連していると考えられた．

keyword

vascular calcification, atherosclerosis, fetuin-A, brain natriuretic peptide (BNP), hemodialysis
血管石灰化，粥状硬化症，fetuin-A, BNP, 血液透析