日大医学雑誌

神経芽腫における Shf の機能的役割に関する研究

原著

著者

古屋 武史1, 2)  上條 岳彦2)  尾崎 俊文2)  草深 竹志1)
中川原 章2)
1)日本大学医学部大学院外科系小児外科学
2)千葉県がんセンター生化学研究部

要旨

半定量的 RT-PCR 法を用いた発現実験の結果,Shf (src homology domain containing F) は神経芽腫予後良好群および正常な神経組織において高発現することが明らかになった.さらに神経芽腫臨床検体を用いた定量的real-time RT-PCR 法による解析の結果,良好な予後とShf の発現には有意な相関が認められた.また予後良好因子として認知されているTrkAが高発現している症例では有意に Shf の高発現が観察された.一方,免疫染色および免疫沈降実験の結果,Shf は細胞質においてTrkAと複合体を形成することが判明した.興味深いことに,Shf を過剰発現させた PC12 細胞では,神経成長因子NGF の刺激による神経突起の伸長が促進された.従って,Shf は神経芽腫において TrkA と相互作用することによって神経細胞の分化を促進する機能を持つとともに,神経芽腫の予後に関与する可能性が示唆された.

keyword

Neuroblastoma, Shf, TrkA, neuronal differentiation
神経芽腫,Shf,TrkA,神経細胞分化