日大医学雑誌

胸壁から腹部への刺傷による腹腔内出血の
開腹術中に発見された小腸異所性膵の一例

症例報告

著者

廣澤 拓也  三松 謙司1)  川崎 篤史1)  荒牧  修1)
久保井洋一1)  加納 久雄1)  小倉 道一1)  桂  義久2)
大井田尚継1)
社会保険横浜中央病院臨床研修医
1) 社会保険横浜中央病院外科
2) 社会保険横浜中央病院病理

要旨

 61 歳,男性.胸壁から腹部への刺創にて入院となった.腹腔内出血の診断にて緊急開腹術を施行した.開腹所見にて,脾被膜下出血,結腸胃間膜と後腹膜血腫を認めた.他病変の検索のために小腸を観察したところ,Treitz 靭帯から 40 cm の空腸に肉眼所見上,白色で半球状隆起型の粘膜下腫瘍が認められ,空腸粘膜下腫瘍の診断で小腸部分切除を施行した.病理組織検査にて,Heinrich 分類 I 型の異所性膵と診断された.異所性膵は,しばしば無症状で開腹時に偶然発見されることがあり,なかには出血や腸閉塞の原因となる場合や,癌化を来たすこともある.緊急開腹手術といえども,開腹手術時には腹腔内を慎重に検索し,異所性膵などの他病変の存在も考慮に入れるべきであると考えられた.

keyword

submucosal tumor, heterotopic pancreas
粘膜下腫瘍,異所性膵