日大医学雑誌

成人ステロイド依存性ネフローゼ症候群患者への
シクロスポリン A の有効性

原著

著者

伊藤  謙  藤田 宜是  里村 厚司  松本 紘一
日本大学医学部内科学講座腎臓内分泌内科部門

要旨

 【目的】ステロイド依存性ネフローゼ症候群患者は,頻回再発型やステロイド抵抗性ネフローゼ症候群患者のようにプレドニゾロン (PSL) 量を容易に減量出来ない.シクロスポリン A (CyA) は後者 2 群に適応がある.ステロイド依存性の患者も PSL の減量の仕方によっては頻回再発をきたす危険を常に内在している.本研究では特に成人のステロイド依存性患者に焦点をあて CyA併用効果を検討した.【方法】当院外来通院中で 3ヶ月以上 CyA 併用歴のあるネフローゼ症候群患者 14 例について調査した.頻回再発型は 4 例,ステロイド抵抗性は 3例,ステロイド依存性は 7 例であった.この 3 群について CyA 併用後 3ヶ月目から 2 年目までの PSL 最小量と,CyA 併用開始直前に起こった再発時の PSL 量を比較した.それにより,CyA の PSL 減量効果について検討した.【結果】頻回再発型では全例,ステロイド抵抗性では 3 例中 1 例,ステロイド依存性では 7 例中 6 例でステロイドを減量できた.【結論】PSL の副作用を抑制するため,PSL 減量目的でステロイド依存性ネフローゼ症候群患者へ CyA 併用を試みる価値が充分にあると考えた.

keyword

steroid-dependent nephrotic syndrome, cyclosporine A, prednisolone, adverse effects
ステロイド依存性ネフローゼ症候群,シクロスポリン A,プレドニゾロン,副作用