原著

著者

西井　竜彦　　松本　太郎*　　麦島　秀雄*　　根岸　七雄
日本大学医学部外科学講座心臓血管外科部門
*日本大学医学部先端医学講座細胞再生移植医学部門

要旨

血管内皮前駆細胞 (endothelial progenitor cell:EPC) は，組織虚血に応答し末梢血中に動員され，血管新生に寄与する．今回，閉塞性動脈硬化症 (ASO) 患者の末梢血 EPC コロニー数や細胞遊走能を測定し，虚血重症度との関連や血行再建術による影響を検討した．EPCコロニー数は，ASO の虚血重症度が増すにつれて減少する傾向が認められた．血行再建術後の EPC コロニー数は，Fontaine 分類 II 度で減少し，IV 度で増加する傾向を示した．ASO 患者では健常コントロールと比較して，stromal derived factor-1, vascular endothelial growth factorに対する細胞遊走能が有意に低下していた．その傾向は虚血重症度が増加するほど顕著であった．以上の結果より，EPC コロニー数や遊走能の評価により，ASO の重症度や手術効果を予測できる可能性が示唆された．

keyword

endothelial progenitor cell, Arteriosclerosis obliterans, vasculogenesis, revascularization, cell migration
血管内皮前駆細胞，閉塞性動脈硬化症，血管発生，血行再建，細胞遊走