日大医学雑誌

医学統計解析についてのアドバイス
―生物統計学を理解し,統計手法を正しく適用するために―

総説

著者

平柳 要
日本大学医学部社会医学講座衛生学部門

要旨

 Florence Nightingale (1820?1910) は神の声を聴き,英国からクリミアに赴いて,ボスポラス海峡に近いトルコのスクタリにあった野戦病院で,日夜を分かつことなく傷病兵の看護にあたり,クリミアの天使と呼ばれた.看護学においては「 Notes on nursing (看護覚え書)」 が有名で,近代看護学の創始者と考えられている.衛生学においては衛生統計学者として有名で,集団の疾病について,鋭い観察眼によって事実を見据え,記述統計学ないし記述疫学で正しく分析し,その問題点を分かりやすく提示した1).
 このように,統計学では少ないサンプルから全体[ 母集団] を推測するため,統計解析の基本は得られたデータがどのような特性を持っているのか,まずは生データの度数分布 (histgram), あるいは 2 つの変量 (variable)の関係を散布図 (scattergram) などで表示してみることである. また, 解析結果に影響を与える交絡因子 (confoundingfactor) や偏り (bias) を避けるため,研究デザインの基本は実験者や環境因子など制御可能なものをできるだけ一定にした上で,時間[ 順序] や個体差など制御不能なものを無作為割り付け (random allocation) などによって確率的に均等化しておくことである.

keyword

medical statistics, statistical technique, multivariate analysis, survival analysis, meta-analysis
医学統計,統計手法,多変量解析,生存分析,メタ・アナリシス