日大医学雑誌

片側声帯麻痺に対する声帯内方移動術

記念講演

演者

牧山 清
日本大学医学部耳鼻咽喉科学講座

はじめに

駿河台日本大学病院耳鼻咽喉科音声喉頭外来を受診する新患患者の 13%が声帯麻痺の患者であり,声帯麻痺新患数は年間 20 から 30 人である.片側性声帯麻痺では高度の発声機能障害が出現する.発声機能低下には麻痺側声帯の声帯筋や粘膜の萎縮により生じる左右声帯の質量の非対称性が影響しているが,もっとも大きな原因は発声時声門に間隙が生じるためである1, 2).この重篤な発声機能障害を改善する目的で声帯内注入術3, 4),甲状軟骨形成術,披裂軟骨内転術などが考案された.これらの手術を総称して声帯内方移動術と呼ぶ.駿河台日本大学病院耳鼻咽喉科では各手術法の選択基準を設定し,それに沿って手術を行っている.