日大医学雑誌

漢方医学的腹証教育モデルの作成

原著

著者

矢久保修嗣  木下 優子  荒川 泰行
日本大学医学部東洋医学講座

要旨

患者から身体所見を得ることは,臨床ではたいへん有用であり,漢方医学でも日本で発達してきた腹部の独特な触診を行う腹診が伝えられてきている.腹診は,患者の腹部を医師が触診し,腹証という腹部所見を得る方法である.腹証の所見から漢方医学的病態解析がされたり,治療すべき漢方方剤が決定されるなど,漢方医学ではたいへんに重要なものである.このため,典型的な腹証の教育ができるような腹証教育モデルの作成を行った.これには心下痞鞭,胸脇苦満,小腹硬満,小腹不仁,腹皮攣急など,患者の腹部における特定部位で医師が触知する感覚を再現した.また,心下部振水音は,適切な手技により心窩部における拍水音が聴かれるように工夫した.この腹証教育モデルにより.患者の腹部から得られる所見を学生は体験として学ぶことが可能となり,漢方医学における腹診の教育に効果を発揮することが期待される.

keyword

Kampo Medicine, fukusho, fukushin, simulator, medical education
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