総説

著者

西成田　　　　進
公立阿伎留病院内科・リウマチ科

要旨

自己抗体の産生と自己免疫疾患発症については多くの機序が考えられている．抗原側の要因としては，真の自己抗原が証明されているものもあるが，それ以外にも暴露抗原の存在，他のキャリアーやウイルスで修飾された自己抗原，自己抗原と外来抗原との分子レベルでの相同性，さらにそれらの分子レベルでの類似がその抗原決定基の周辺に及んで，より病因的な抗原性を獲得するとされる epitope progression 説などがあげられる．抗体産生細胞側の要因としては，自己抗体産生細胞のアポトーシスの異常，免疫学的寛容の破綻，多クローン性 B細胞活性化，自己抗体産生細胞の腫瘍化などの機序が考えられる．遺伝子側の要因としては，ある特定の HLAclass II 分子を持つものが，特定の自己免疫疾患と相関することが知られており，その意義についていくつかの仮説が提唱されている．さらに HLA 以外の遺伝子領域と自己免疫疾患との相関が検討されているが，多因子が発症に関与すると考えられる自己免疫疾患での個々の遺伝子の発症への関与は弱く，現時点で特定の自己免疫疾患における主要な疾患感受性遺伝子の同定にはいまだいたっていない．いずれにしても実際の自己免疫疾患の発症には上述した複数の自己抗体産生の機序が関与し，他の環境要因やホルモンなどの影響をうけて発病にいたるものと考えられている．
自己免疫疾患におけるサイトカインの異常や T helper1 細胞と T helper 2 細胞とのバランスの異常が報告されているが，自己抗体産生や自己免疫疾患の発症との直接的な要因であるかどうかは不明である．

keyword

mechanisms of autoantibody production, mechanisms of autoimmune diseases
自己抗体産生機序，自己免疫疾患発症機序