日大医学雑誌

マウス ES 細胞を用いた
腸管構成細胞分化誘導法の開発

原著

著者

若林久実子1, 2)  松本 太郎1)  越永 従道2)  麦島 秀雄1)
1)日本大学医学部先端医学講座細胞再生移植医学部門
2)日本大学医学部外科学講座小児外科部門

要旨

腸管不全の根治療法である小腸移植は,未だ一般的な治療法とはなり得ていない.本研究では EmbryonicStem (ES) 細胞を用いた腸管組織再生の可能性を探るため,マウス ES 細胞から腸管構成細胞を分化誘導する培養法を検討した.ES 細胞の懸垂培養により形成された胚様体 (Embryoid Body; EB) を培養することにより,一層の上皮と筋層を有する腸管様構造が発現することを形態学的および免疫組織化学的に証明した.これらのうちには,腸管に特徴的なリズムで自発的収縮をするものも観察された.retinoic acid (RA) 10?8 M および 0.1%dimethyl sulfoxide (DMSO) 存在下に培養した EB では腸管様構造が効率的に誘導された.ES 細胞および EB における mRNA 発現パターンを検討すると,0.1% DMSO存在下で腸管上皮幹細胞マーカーである Musashi-1 (Msi-1) や内胚葉系遺伝子の発現が亢進していた.これらより,0.1% DMSO は腸管上皮およびその幹細胞の分化誘導に有用な因子であることが示唆された.

keyword

ES cell, intestinal stem cell, DMSO, Musashi-1, intestinal failure
ES 細胞,腸管上皮幹細胞,DMSO,Musashi-1,腸管不全