日大医学雑誌

大学病院におけるクリニカルパスの有用性

総説

著者

星野真由美  池田 太郎  川嶋 弘之  井上 幹也
杉藤 公信  萩原 紀嗣  越永 従道  秋山  斐*
鳴海絵里奈*  井下万希子*  岩佐亜紀子*  松尾 美奈*
猪  優子*  吉田 明子*
日本大学医学部外科学講座小児外科部門
*日本大学医学部附属板橋病院看護部

要旨

クリニカルパス (以下,パス) とは,そもそも 1950 年代の米国における軍事産業の作業工程を効率的に行うための計画づくりの手法である「 クリティカルパス」 に発端を持ち,医療においても診療を計画的かつ効率的に行うための有用な手法として数年前より重要視されつつある.「クリティカルパス」 より,われわれ医療従事者にとっては「 クリニカルパス」 の方が妥当であるということで普及した名称である1).
米国ではすでに 1983 年に DRG/PPS が導入され,医療費が定額制となり,病院経営における損失を最小限にするため,また医療の質を向上させて患者の支持を獲得するためにパスが普及し利用されている.日本でも 2003年から全国の 82 施設の特定機能病院で DPC (DiagnosisProcedure Combination) による医療費の包括支払い制度が開始され,大学病院でのパスへの関心が急速に高まっている.
本学医学部附属板橋病院においても,医師を中心としたクリニカルパス委員会が発足し,定期的な活動を行っている.また当科でも数年前より小児外科クリニカルパス委員会を結成し,パスの作成に取り組み,現在小児外鼠径ヘルニアおよび陰嚢水腫に対して運用している.
今回,大学病院におけるパスの有用性と問題点について述べ,当科クリニカルパス委員会の病院経営に主眼をおいたパスへの取り組みと,小児外鼠径ヘルニア・陰嚢水腫のパスの作成と運用について報告する.

keyword

Critical Pathway, Pediatric Surgery, Inguinal Hernia, Hydrocele testis, University Hospital
クリニカルパス,小児外科,小児外鼠径ヘルニア,陰嚢水腫,大学病院