日大医学雑誌

末期心不全に対する外科治療

教授就任講演

演者

南 和友
日本大学医学部外科学講座心臓血管外科部門
ドイツボッフム大学,バードユーンハウゼン心臓病センター

はじめに

心臓外科領域において慢性心不全は予後不良な病態で心臓移植が最終的な治療法であった.ドイツでは毎年 10万,アメリカにおいても毎年 40 万人が新たな心不全と診断されており,長寿大国日本においても今後,心不全患者の増加が予想される.主に心不全の治療としてジギタリス剤・利尿剤・ACE阻害剤・b -ブロッカー・カテコラミンを用いた内科的治療が挙げられる.これら薬物治療によっても改善しない,または薬物忍容性のない重症心不全が外科的治療の対象となる.これまでに私が主にドイツで行ってきた慢性心不全に対する外科的治療について報告します.まず末期心不全の外科治療法として大きく 5 つの方法があり,I) 拡張した左心室を縮小する左室縮小術,(II 両心室を同期させて心機能の向上を図る両心室ペーシング・心臓再同期療法,III) 機械的に心臓の補助を行う,人工心臓または完全人工心臓,IV) 心臓移植および心肺同期移植,V) 再生医療が挙げられる.